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最弱能力の作業療法士―戦えなくなった英雄たちを、もう一度日常へ―
異能の強さが、英雄の価値を決める世界。
朝倉湊の異能《微調整(アジャスト)》は、触れたものをたった3センチしか動かせない。
判定は最低のEランク。
「それ、手で動かした方が早くない?」
そう笑われ、守護士になる夢を諦めた。
それでも、人を救うことまで諦めたわけじゃない。
かつて事故で右手に障害を負った母が、一人の作業療法士との出会いによって、もう一度料理を始めた。
身体は元に戻っていない。
それなのに、母は笑っていた。
その経験から、湊は「作業療法士」を目指して医療大学へ進学する。
そこで出会ったのは、かつて空を自在に飛んでいた少女・九条凛。
将来を期待されたエリート守護士候補だった彼女は、事故によって歩く力と異能《天翔》を失い、車椅子での生活を送っていた。
周囲が願うのは、歩行の回復と異能の復活。
しかし凛は、リハビリを拒み続けている。
「もう一度歩けたら、本当に幸せなのか?」
「飛べなくなった私は、もう私じゃないのか?」
まだ作業療法士ですらない湊は、少女の言葉にならない願いに向き合い始める。
やがて彼は、腕を失った英雄、記憶を失った青年、戦うことを辞めたい守護士たちと出会い、「人を救う」とは何かを学んでいく。
失った能力を取り戻すことだけが、救いじゃない。
歩けなくても、学校へ行ける。
腕を失っても、大切な人を抱きしめられる。
英雄を辞めても、新しい人生を選べる。
最強の力はない。
奇跡の治癒能力もない。
あるのは、たった3センチを動かす最弱の異能と、その人の「したいこと」を見つけようとする意志だけ。
これは、誰よりも弱い異能を持つ少年が、作業療法を通して誰かの人生の続きを支えていく物語。
治せなくても、取り戻せるものがある。
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