恋愛 女←女表現あり小説一覧
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チリンとベルが鳴り、お店の扉が開きます。
今日も不滅のダンジョンを攻略すべくこの村を訪れた方々がご来店なさったようです。
「いらっしゃいませ、ようこそベリー商店へ。本日はどのようなご用件でしょうか? 各種道具を取り揃えて、魔王討伐に向かう方へのサポートに心を配ります。お持ちいただいた素材の買取も行っておりますのでお気軽にお申し付けください」
ニコリと微笑むわたくしは店主のシューベリーと申しまして、親しい方にはティナと呼んでいただいております。
ここは世界最高難易度を誇る不滅のダンジョン前の村でございます。
お金の都合が付くのであれば、古今東西どんな品物でもご準備いたしましょう。
とある事情で祖国を出てこの村にやってきたわたくしは、この村で懐かしい顔に出会う事になります。
もう会う事は無いと思っていた再会に嬉しいこともあったり、戸惑いもあったり様々でございます。
そう、わたくしの愛しい人バシレウ様。
貴方はどうしてここにきてしまわれたのでしょうか。
黙って姿を消したわたくしの事なんて、呆れて憎んでそして忘れてくださればいいと、そう願っておりましたのよ。
わたくしはバシレウ様を前にしてしまうと、己の犯した罪の意識に苛まれ、閉じ込めていたはずの苦しみと悲しみが決壊してしまうのです。
ああ、けれども貴方は今でもわたくしの事を熱く燃えるような瞳で絡め取ってくるのですね。
酷いお方。
けれども、本当に酷いのは他でもないわたくしなのでございましょう。
貴方にわたくしの犯した罪を話すことが出来た時、きっとわたくしはもう一度その手に触れることが出来るのかもしれません。
文字数 139,126
最終更新日 2021.05.03
登録日 2021.04.12
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