恋愛 古本屋 小説一覧

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恋に憧れ

30歳の薄鉢亜沙美(うすはち あさみ)は、恋をしたことがない。 誰かを好きになり、選ばれ、一緒に生活を営む――そんな感覚を知らないまま生きてきた。 ​ある日、職場の古書店の奥棚で見つけたのは、見知らぬ女性が本に残した書き込みと、『続きを考えてみてほしい』と書かれた便箋だった。 記述を追うごとに見えてくるのは、理想と現実の間で相手の不完全さを許していく「完成した関係」のグラデーション。 ​自分にはないその感覚に静かに思いを馳せる亜沙美の元へ、常連客達が訪れる。
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桜雪  ~40年ぶりに恋人と再会をしたと思ったが、~

昨年私は丸の内にある会社から、神田にある子会社に左遷された。  面倒な会社行事の帰りに寄った神保町の古本屋で、自分が所有していた本が売りに出されているのに気がついた。どうして売られているのか、その理由が思いつかずに、書店を後にするが、道端に表記されていた高浜虚子の俳句を見て思い出し、急ぎその本を買い戻した。  それは、大学二年の時に千鳥ヶ淵のボートの上で拾った定期券からの縁で知り合った女子高生が、翌年偶然私と同じ大学に入って来て、交際した慶子に貸した本だった。  古本屋から、本を持ち込んだとおぼしき慶子は近くの陶芸教室に通っていると聞きつけると、無性に慶子に会いたくなり、その教室に入会し、彼女を捜索する。  しかし、講座は週に色々な時間帯や曜日に二十コマあり、なかなか慶子に会えなかった。それどころか本当に慶子がそこに通っているのかと疑念を抱いた。    そんな時、各自が焼き上げた陶器を出品し合う作品展が開かれた。そこで、慶子の新姓である珍しい当野という名で出されている作品を確認した。さらに、辛抱強く出席していない日時のコマを潰して行くと、ある日、当野さんという呼び声がした。逆光ではあったが、そこに見えるのは間違いなく慶子の姿だった。帰路彼女に後ろから声をかけると、振り向いてはくれたものの、彼女は首を傾げた。  何と彼女は慶子の娘だった。 一卵性母娘か、姿、形はそっくりであった。 娘からは、その直前に慶子がガンで亡くなっていたことを告げられた。  外は桜が満開であったが、季節外れの雪が降り出し、桜の花に降り積もっていた。 娘と別れ際、地下鉄の同じホームに立った。しかし、それぞれに反対の方向に乗車して、別れて行った。
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