BL 全寮制学園小説一覧
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あの方の心が閉ざした瞬間を覚えている。
敬愛と恋情との区別も曖昧な時分のことだ。
「結婚しようとも貴方ほど愛せる人はいまいよ」
冗談めいていながらもまごうかたなき本心だった。それを、あの方の想い人は笑い飛ばしたのだ。
「そういうことは好いた女に言うのだな。男同士で寒気がするわ」
その言葉は、彼の人なりの冗談であったのだろう。表情は柔らかく、しかしどこか呆れたような色を滲ませていた。
気にすることなどない一幕のはずであった。ただの言葉遊びに過ぎぬ、他愛のない遣り取りのはずであ
った。
しかしながらその頃すでに己の性癖――同じ男に性の欲求を抱くということを感じ始めていたあの方にとって、彼の人の言葉は強い拒絶となり、あの方を酷く萎縮させた。あるいは、彼の人は彼の人の想いを感じ取られていあのかもしれない。今となってはもう、確かめようのない話ではあるが。
そのようにして、あの方はそっと心を閉ざされた。誰にも気づかれぬように、美しく気高いヴェールで幾重にも覆い隠してしまわれた。
表面上は何も変わらないまま、誰にも見せぬ心があることさえも気づかれることの無いよう、厳重に、そして自然に。
文字数 117,538
最終更新日 2023.11.12
登録日 2021.07.19
特殊な能力を持つ子どもたちの学び舎、全寮制の八年制学校ギムナジウム。その寮には自治のため独特のルールが設けられていた。
進級し、寮長を務めることになったのっぽの五年生・キャロは、兎の耳と尻尾を持つ小さな一年生・トピアスの窮地に出くわす。彼はトイレの中で声を奪われ、今まさに襲われようとしていた。
【※登場人物の受攻は非固定です】
文字数 48,087
最終更新日 2023.09.06
登録日 2021.07.19
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