バリスタ 小説一覧
小説AI検索
1件
1
明日が来ない君に、「また明日」と言った。
一杯の珈琲で、誰かの心を救いたい。
亡き父の背中を追い、街角のカフェ「珈音」で働く新人バリスタ・佐倉七海。
そんな彼女の前に、毎日のように同じ窓際の席へ座り、カフェラテを注文する青年・藤堂悠真が現れる。
穏やかな笑顔。琥珀色の瞳。古い文庫本。
そして、必ず口にする「また明日」。
けれどある日、彼が落とした栞に、七海は不穏な言葉を見つけてしまう。
『あと何度、この香りを嗅げるだろうか』
やがて知ったのは、悠真が治療の難しい病を抱え、残された時間がわずかだという事実だった。
「また明日」と言える保証など、どこにもない。
それでも彼は店へ来る。
病院では“患者”でしかない自分が、七海の淹れる珈琲を飲むときだけは、ただの「藤堂悠真」に戻れるから。
七海は決める。
彼が最後の一杯を飲むその日まで、何度でも珈琲を淹れようと。
春の桜。夕暮れの海。ラテアート大会。
重なる手。交わされる約束。
そして、二人だけが知る「優しい嘘」。
「少し眠りますね。……また明日」
その言葉が最後になると知りながら、七海も笑って答える。
「はい。また明日」
人を救うとは、悲しみを消すことじゃない。
絶望を抱えたままでも、もう一度、明日へ歩き出せる温度を渡すこと。
これは、限られた命を生きた青年と、一杯の珈琲に想いを込めた女性が紡ぐ、
“また明日”という優しい嘘から始まる、涙と再生の恋物語。
感想数 0
文字数 25,685
最終更新日 2026.01.07
登録日 2026.01.02
1件