「機能性」の検索結果
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一晩だけの禁断の恋のはずが憧れの御曹司に溺愛されてます
レンタル有り建築設計事務所でデザイナーとして働く二十七歳の莉子。仕事中は女を捨て、機能性重視の服装と無難なメイクで完全武装をしているけれど、普段の好みはその真逆。それを偶然、憧れの建築家・加賀弘樹に知られてしまう。しかし彼は、女を捨てるのは勿体ないと魅力的な男の顔で彼女を口説いてきて? 強烈に女を意識させる甘い誘惑に、莉子は愛妻家という噂を承知で「一晩だけ」彼と過ごす。けれど翌日、罪悪感から逃げ出した莉子を、弘樹はあの手この手で甘やかし、まさかの猛アプローチ!? 「俺の好きにしていいと言ったのは、君だ」ワケアリ御曹司に甘く攻め落とされる、極上ラブストーリー!
文字数 143,585
最終更新日 2024.01.19
登録日 2024.01.19
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あー、消えたい。
私の言いたいことが相手に伝わらないし空回りして、思ってもみないことを発言したりと。
私のこういうところは今始まったことではなく、幼少時からの延長線だ。
周りの大人は「何で、他の子と同じようにできないのか?」や「甘えからきているわがまま。」、「馬鹿。」などと言いたい放題。まるで、『私』という存在をこの世界から追い出すかのような心もない言葉。いっそ、「打ち消してくれていいのに。」と思う。こっちだって、こんな生きづらい冷たい世界に生まれたくて生まれてきたわけではないのに。
自分という存在にも嫌気がさしていて、そうぼんやりと思い耽っていたある冬の朝、私はいつも通りに出勤していた。
その日の朝はいつになく、手がかじかむぐらいに寒く、鹿の絵が刺繍されたお気に入りのミトンを両手に身に付けていた。
私はバス通勤なので、目的のバス停に向かっていた。到着すると側にベンチが設置されている。「座ろうか。」、躊躇ったが立って待つことにした。程なくしてバスが時刻通りに到着し、いつも通りにオフィスへと向かった。
そのお気に入りのミトンが片方ないのなに気付いたのは、帰宅して自室に籠ってからだ。機能性やデザイン性に優れておりとても気に入っていたので、大袈裟に言って絶望の淵に立っているような苦い感覚を今でも覚えている。自室の隅から隅まで探したが、やはり出てこない。愕然として「もと来た道を辿れば、あるかもしれない。」淡い期待を描きながら、寒い冬の帰宅路をUターンした。
街頭に照らされ、今朝のバス停がぼんやりと現れた。
私は信号が青になると同時に急ぎ足で、バス停に駆け寄った。
だが、私の淡い期待とは裏腹に求めていた片方のミトンは存在しなかった。
私はがっくりと肩を落とし、ため息をつきながら再び、自宅へと続く道のりへ歩を進めた。
しかし、翌朝想像もしない出来事が起こった。その日も出勤でいつものようにバス停へ向かっていると、遠目ながら見覚えのある片方だけのミトンがベンチの背もたれに丁寧に掛けられていた。
近付いて確認すると、やはり私のミトンである。再度間違いないか用心深く確認して、束の間、深い安堵と歓喜に包まれていた。いや、嬉しいを通り越して感動したのだ。
どこかの顔も知らない名前も分からない心優しい人が私がすぐに分かるようにと目立つようにベンチの背もたれに片方だけのミトンを掛けてくれたのだ。
もうすぐ、バスが到着するというのに私は人目憚らず、涙した。
つい最近まで、この世界に失望していた私だったが、「人生捨てたものじゃない。」と生まれて初めて思わされた出来事だった。
今でも、私と私の片方だけのミトンを再会させてくれた方はどんな人物か分からないので直接、お礼は伝えられない。
だが、その方のように「自然と他者に親切にできるような人間になりたい。」と思ったある冬の朝だった。
文字数 1,175
最終更新日 2021.11.26
登録日 2021.11.26
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