ナタ=デ=ココ

ナタ=デ=ココ

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児童書・童話 連載中 短編
中学一年生の日向桜は、有名な映画監督であった亡き父にあこがれて、誰かの心を動かす映像を撮ることが夢。父も所属していた放送部で映像を作るんだと意気込んでいた桜だったが、入学した中学校には放送部がなかった。 「ないなら、つくればいい」――そのひと言で、桜の挑戦がはじまる。 明るくて頼りになる幼なじみ浅野楓、無口でちょっと影のあるカメラマン黒瀬蓮、静かで物語を書くのが得意な東堂葵。 性格も得意分野もバラバラな四人が集まって、桜たちの「放送部」が動き出す。 最初はカメラの使い方もわからず、意見がぶつかってばかり。それでも、みんなで笑いながら放課後の放送室を掃除し、企画を立て、映像を撮り続ける。ドラマのテーマは『笑顔』。誰かの笑顔を撮ることで、見てくれた人の心まで明るくしたい。 けれど、カメラを向けるたび、蓮の手が止まる。彼には、笑顔を撮れなくなってしまった理由があった。――亡くなった妹の、最後の笑顔。その記憶が、彼のレンズを止めていた。 「だったら、私が何度でも笑うよ」 桜の言葉が、蓮の心の奥に届く。止まっていた時間が少しずつ動き出して、四人の物語は輝きを取り戻していく。 そして迎えた放送コンテスト。結果は、佳作だったけれど、スクリーンの中には、誰よりも輝く笑顔が映っていた。 上映を終えたあと、夕陽の下で蓮がカメラを構える。 「桜」 名前を呼ばれた瞬間、風が吹いて、桜は笑った。――パシャ。シャッターの音が、空にひびく。 それは、あの日放送室で生まれた光のつづき。 桜たち四人の、未来へつながる『笑顔』の物語。
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小説 215,781 位 / 215,781件 児童書・童話 4,026 位 / 4,026件
文字数 32,774 最終更新日 2025.12.09 登録日 2025.12.09
現代文学 完結 ショートショート
「君の食べる姿が好きだった」 それは、何気ない日々の中で私が見つけた、いちばん美しい光景だった。 スイカ、かき氷、栗、うどん――季節ごとに変わる食べ物とともに、少年と過ごした時間は、やさしく、あたたかく、そしてどこか儚いものだった。 やがて訪れる別れの朝、語り手は気づく。 食べることは、生きることそのものであり、誰かのいのちを受け継ぐことなのだと。 やさしさの中にある痛みを描いた、命と記憶の物語。
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小説 215,781 位 / 215,781件 現代文学 8,975 位 / 8,975件
文字数 1,790 最終更新日 2025.12.09 登録日 2025.12.09
恋愛 連載中 短編
はじめて感じたのは、輪郭のない暗がりだった。 僕は、自分が誰なのかも、何でできているのかもわからなかった。触れることも、歩くこともできない。ただ、薄い膜越しに光の気配だけが、ぼんやりと伝わってくる。 やがて聞こえてくる音。水の流れる音。花が挿される音。そして、誰かの足音。 その人は、僕のそばに座る。低く、柔らかな声で何かを語りかけてくる。言葉の意味はわからない。それでも、自分に向けられた呼びかけだということだけが、確かに胸に沈んでいく。 指先が近づいてくる。けれど、その指は僕に触れる直前で止まり、空気を撫でるように宙をさまよい、やがて離れていく。触れたら壊れてしまうとでも思っているかのような、そんなためらい方だった。 日々は、淡く続いていく。光が満ちると誰かが花を挿し、その人の声が僕に語りかける。 そして、ある日、視界が明瞭になっていく。白と黒の濃淡だけだった世界に、形が現れる。細い身体、長い髪、柔らかな輪郭。その姿を見た瞬間、知らないはずなのに、知っていた。 ――カミーユ。 名前が、胸の奥から浮かび上がってくる。誰にも教わっていないのに、その音の響きだけが、確かな事実として僕の中に存在していた。 やがて、世界に色が満ちる。 机上のアネモネが赤く染まり、白薔薇の白が目に飛び込んでくる。そして、カミーユの金糸のような髪、淡く深い碧眼。その美しさに、胸が熱く、痛くなった。 カミーユは、僕に触れようとして、触れられずにいた。やつれた顔で、震える声で呟く。 「もう一度、私を愛して」 「君に、会いたい」 その言葉の意味は完全には理解できなかった。それでも、胸の奥の波紋は激しく揺れた。 二つの魂が辿り着く、愛の極致とは。これは、美しく儚い、魂の物語。
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小説 215,781 位 / 215,781件 恋愛 63,117 位 / 63,117件
文字数 12,024 最終更新日 2025.12.09 登録日 2025.12.09
恋愛 完結 短編
「愛って何ですか」――青年は私に問いかけた。 女優として多くの人に愛されているジェイド。華やかなスポットライトを浴び、歓声に包まれ、薔薇の敷き詰められた道を歩く彼女は、誰もが羨む存在だった。 「私は私を愛しているわ。それだけよ」 他人の愛など信じない。愛を証明できるのは自分自身だけ。それが、彼女の生き方だった。 仕事終わりに通うパブで、カウンター越しに問いかけてくる青年。彼は愛を知らない。母は多くの男性を愛し、愛されながらも、泣き崩れていた。彼女の愛は偽物だったのかと。 「そうじゃないわ。彼女の愛は本物よ。すべてを、等しく、愛していたのよ」 ジェイドの言葉に、青年の灰色の瞳にわずかな光が差す。そして、二人は静かに微笑み合う。 しかし、平穏は突然終わりを告げる。 ジェイドの恋人の男が、記者の前で彼女との関係を否定したのだ。「彼女とはただの友達だよ」――その言葉は、鋭利な刃物のように彼女の胸を裂いた。 自己愛だけが真実のはずだった。誰に裏切られようと、彼女という存在は彼女自身によって肯定され続けるはずだった。 それなのに、どうして、こんなに、胸が苦しいの。 「私は彼を愛していたわ。そして彼も、私を愛していた。そのはずだったのに」 涙が止まらない。いつものパブで、青年に問いかける。 「ねえ、愛ってなに」 青年は静かに答える。 「貴女は、愛して欲しかったのではないですか。自分で自分を愛すことで、愛されていることを感じていた。そして、すべての人を等しく愛していた」 拒み続けていた真実。私は私を、恋人を、そして――青年を愛していた。 その瞬間、世界の色彩が一変する。胸を満たしたのは苦痛でも悲嘆でもなく、ただひとつの甘美な衝撃。 自己愛という鎧に守られていた女優が、初めて他者を愛したとき、運命は残酷な結末を用意していた。 愛とは何か。その答えを見つけたとき、彼女の胸に灯る炎は、永遠に燃え続ける。
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小説 215,781 位 / 215,781件 恋愛 63,117 位 / 63,117件
文字数 4,863 最終更新日 2025.12.09 登録日 2025.12.09
青春 完結 短編
美しいと思った――その瞬間、息をすることさえ忘れていた。 秋の午後、中学三年生の有栖川蒼は、友人に誘われて訪れた美術館で一枚の絵と出会う。『教室の午後』と題されたその水彩画は、何の変哲もない風景なのに、確かに息をしていた。光が生きていた。 「なんて、美しいのだろう」 絵筆を握ったことすらなかった有栖川だったが、作者の名前――『一色葉』を見た瞬間、心の奥で何かが囁いた。この人のように描いてみたい。こんな風に光を描ける人になりたい、と。 高校に入学した有栖川は美術部に入部し、水彩画と出会う。色が紙の上でほどけ、滲み、重なり合っていく。その不確かさが楽しくて、描くことに夢中になっていく。県展に出品した作品は見事に受賞し、有栖川の絵は多くの人の心を動かした。 一方、国内最高峰の美術教育を誇る琥珀学院に通う一色葉は、完璧な技術と構図で数々の賞を獲得してきた。彼にとって美とは「形に宿るもの」であり、構成と線、余白を制することこそが本物の美だった。 しかし、ある日県展で有栖川の絵を見た瞬間、一色の世界は音を立てて崩れ始める。 構図も技術も、何もかもが足りていない。それなのに――色が、生きていた。光が、呼吸していた。 「なぜだ。なぜ、こんなにも……」 完璧とは言い難い拙い絵が、この世の何よりも美しく見えて仕方がない。頬を伝う涙が止まらない。その絵の作者名を見た瞬間、胸の奥で何かが焼ける音がした。 『有栖川蒼』 その名を見てから、一色は彼のことが頭から離れなくなる。調べ上げた末、遂に有栖川の通う高校へと足を運ぶ。 「君の絵は、構図も、技術も、何もかもが足りていない!」 感情を抑えられずに言葉をぶつける一色に、有栖川は太陽のように眩しい笑顔を向ける。 「絵を描く事ってきっと、もっと楽しい事だと思うぜ」 その言葉が、一色の中の美の定義をぐらりと傾かせた。 だが、顧問の先生から意外な事実を告げられる。 「あなたが、彼の最初の光だったのね」 有栖川が絵を描き始めたきっかけは、中学時代に見た一色の作品『教室の午後』だった。一色の理性の光が、有栖川の魂を揺らしていた。 その事実を知った一色の中で、何かが動き出す。 完璧な構築だけを追い求めてきた自分。感情を排除してきた自分。だが、自分の絵が誰かの光になっていた――その矛盾が、一色の心を激しく揺さぶる。 一色の中で何かが壊れ、そして生まれ変わろうとしていた。 技術と感情、理性と衝動、構築と破壊――相反する二つの美が交錯するとき、二人の魂はどこへ向かうのか。 光を追い求める二人の芸術家が辿り着く、美の極致とは――。 純粋な創作への情熱と、魂を賭けた芸術の探求を描く、眩いほどに美しい青春物語。
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小説 215,781 位 / 215,781件 青春 7,605 位 / 7,605件
文字数 14,101 最終更新日 2025.12.09 登録日 2025.12.09
ファンタジー 完結 短編
戦争は終わったと、人は言うけれど――。 蒸気と歯車が支配する機械仕掛けの国。煤けた駅のホームで、エリオットは倒れている一人の青年を見つける。骨ばった腕、血の気を失った肌、それでも確かに息をしているその命を、彼は抱き上げた。 かつて兵士だったエリオットは、戦場で多くの命を奪ってきた。敵も味方も、若い者たちも。その中には、灰色の髪を持つ魔法士の少女もいた。命令に従い、剣を振るい、炎の中で彼女を斃した日のことを、彼は忘れることができない。 「戦争は終わった」 自分に言い聞かせるように呟きながら、エリオットは青年――ルカを工房へと連れ帰る。冷えた体を温め、傷を癒し、居場所を与える。それは贖罪なのか、それともただの逃避なのか。自分でもわからないまま、二人の静かな日々が始まった。 最初は警戒していたルカも、次第に工房での暮らしに馴染んでいく。歯車を磨き、部品を整え、市場で人々の温かさに触れる。この冷たい機械の国にも、確かに人の温もりがあることを知っていく。 しかし、ある夜、ルカの指先から溢れた淡い光を見て、エリオットは気づいてしまう。それは隣国の魔法――かつて戦場で見た、あの光と同じ色をしていた。 機械と魔法、贖罪と赦し、そして失われた命の行方は。戦後の灰色の世界を舞台に描く、切なく儚い愛の物語。
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文字数 16,002 最終更新日 2025.12.09 登録日 2025.12.09
キャラ文芸 連載中 短編
神に選ばれた「氷」の少年と、神を呪う「炎」の異端者が出会ったとき、祈りしか知らなかった世界が崩れはじめる。​ 神権政府が支配する聖都で、奇跡の力を持つ少年は神の子として育てられ、異端者の拷問を通して、自分の力が人体実験の産物かもしれないと知る。​ やがて彼は処刑寸前の異端者を救い出し、祈りのない朝を生きる反政府組織〈アルミナ〉に身を寄せ、神ではなく人を信じて生きる道を選ぶ。​ そして、少年は、仲間と共に生きるために、かつて守った聖都へと刃を向ける。 これは、神の子として育てられた少年が、はじめてひとを知るあたたかな物語。
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小説 215,781 位 / 215,781件 キャラ文芸 5,606 位 / 5,606件
文字数 38,590 最終更新日 2025.12.08 登録日 2025.12.08
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