小さな幸せの見つけ方

「振り返る」ことは「今の自分を問う」こと

2018.07.16 公式 小さな幸せの見つけ方 第24回
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「振り返る」ことは未来を切り拓くこと

二人が帰宅した後、私は責任重大な任務を終えたことに安心しつつ、横に転がってスマートフォンを触っていました。そして、ニュースサイトを見ていると、ある英文章が目に留まりました。それは、

「Be who you needed when you were young.」

という一文でした。これは「自分が若かったときに必要だと思った人になれ」という意味です。

私はこの文章を目にして、思わず感動してしまいました。きっと、そこには高校生の自分がいたのだと思います。私は、自分が高校生のときにいて欲しいと思った人のことを思い出していました。辛かったとき、悲しかったとき、誰にも言えないことがあったとき、誰に聞けばいいか分からなかったとき、不安でたまらなかったとき、そんな悩みに気づき、そばにいて寄り添ってくれる人を探していました。そして、そんな大人になることが私の目標でした。しかし、いつの間にかこの目標をどこかに置き忘れてしまっていたようです。

これは私の勘違いかもしれませんが、私には高校生の息子さんが英語の勉強を通して、彼なりの苦しみや生きるうえでの大切な問いを私に対して投げかけてくれていた気がするのです。その問いかけにきちんと答えることができたかはわかりませんが、初めて過去の自分との約束を果たせた気がしました。きっと、私の感動はその約束を守れたことへの嬉しさだったのでしょう。

一般的に「振り返る」ことは、後ろ向きの姿勢という意味に受け取られ、あまり肯定的には捉えられていません。もちろん、過去に執着を持ち過ぎてしまうことは、苦しみの原因にもなり、あまりすすめられることではありません。しかし、過去の自分の原点を「振り返る」ことは「今の自分を問う」ことになり、自分が本来望んでいた未来を切り拓くことにつながるのです。

あなたは自分が若かったときに、必要と思っていた人になれていますか? 人は何度でもやり直し、軌道修正することができます。ときには立ち止まって、過去の自分と対話してみてはいかがでしょうか。すると、自分にとって本当に大事なものが見えてくるのではないでしょうか。

 

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プロフィール

大來尚順
大來尚順

1982年、山口県生まれ。僧侶でありながら講演や執筆、通訳や仏教家関係の書物の翻訳なども手掛け、活動の場を幅広く持つ僧侶。龍谷大学卒業後に渡米。米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。

ビジネスマンの悩みを仏教の観点から解決に導く著書『端楽(はたらく)』や、英語に訳せない日本語の奥深さを解いた『訳せない日本語』(ともにアルファポリス)が好評のほか、国内外を問わず仏教伝道活動を広く実践している。

著書

小さな幸せの見つけ方

「日常の中にある、普段は気づきにくい“幸せ”を再発見すること」をテーマとした、著者自身の実体験による24話のエッセイ。人間にとって本当の“幸せ”...

訳せない日本語

アルファポリスのビジネスサイトで大人気の連載がついに書籍化!! 正確に英語で訳せない日本語にこそ、実は日本古来の文化や習慣、日本人の「心」が息...

端楽

浄土真宗本願寺派の僧侶であり、ハーバード大学研究員の経歴を持つお坊さんが、「働く」ことを仏教的な視点から解説し、人が働くことの意味と意義における...
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