「人の目が気になる」「本音を言えない」という人が増えています。
自分の発言が相手を不快にするのではないか。相手の期待通りに反応できただろうか。さっきの対応は間違っていなかったか。
色々気になりだすと、思うように発言できなくなるものです。自分の言動の選択基準を相手に合わせると、相手の反応を常に気にしなければならず、自分の本当の気持ちや考えを表現しにくくなります。
本音を言えない、そもそも自分がどうしたいのかわからない。そんなお悩みの背景には何があるのでしょうか。
その理由の一つに、「同調性と他人軸」があります。
「同調性」とは、自分の意見や行動を、多数派のそれに合わせる心理のことです。
例えば、多くの人が列に並んでいるとき、自分だけ違う行動をとると「自分勝手な人だ」「ルールを守らない人だ」と思われてしまうのではないかと懸念し、必ずしも並ばなくてもよい場合であったとしても、周りの人に合わせて「自分も列に並ぼう」と同調した行動を選択することを指します。
私たちは、集団で行動するとき、自分の考えに従って行動するよりも、多数派の意見に合わせて同調することで身を守ろうという心理が働くのです。このように、周りの人と同じ行動をとり同じ意見を言う心理を「同調性バイアス」といいます。
「同調性バイアス」の危険性としては、多数派が危険な行動や思想に陥った場合、個人が自分自身で判断せず、周りと同じ行動を選択することにより、集団全体が危険な方向へ走る可能性が生じることがあげられます。
冷静に考えてみると、多数派が常に正しいとは限らないものです。ですが、自分で考え、自分で行動を決める習慣のない人は、つい周りに流されてしまいます。なぜなら、もしも自分で考えて行動を選択した場合、自分が間違った決断をするかもしれませんし、自分の考え方が間違っているかもしれないからです。自分が考え、決めて選択した行動の結果、自分だけが失敗するかもしれない。そんなリスクを考えると、長いものに巻かれて、大多数の意見に合わせておく方が無難で安心、と思ってしまうのも仕方ないことかもしれません。
なかには過去に、自分の考えに従って行動した結果、「横並び」からはみ出して孤立し浮いてしまった経験を持つ人がいるかもしれません。
あの時のように、恥ずかしい思いをしたくない、間違いたくない、失敗したくない。そもそも考えることが面倒くさい、何を考えたらいいのかわからない。そういうことで、自分の身を守る防衛反応が働き、無意識のうちに周囲の人に合わせるようになるのです。
自分を守るために多数派に合わせ行動するうちに、常日頃から考えることを放棄していると、いざ、自分はどうしたいのか、考えなければならない場面でわからなくなってしまいます。
さて、「同調性」に続いて「他人軸」についてもお話しましょう。
周囲の人にどう見られているかを気にして、相手の価値基準や世間の基準、つまり「他人軸」で生きる人はとても多いです。「同調性」は集団に合わせる心理ですが、「他人軸」は目の前の相手、あるいは資本主義や学歴主義などの社会通念がその人の行動判断基準、価値基準になる心理のことです。
「他人軸」で生きる人も、自分の意見を抑え、他人の意見に合わせるため、自分の本当の気持ちや考えがわからなくなることがあります。自分のやりたいことではないのに周囲の期待に応えようとがんばりすぎて、ストレスを抱える人も多いです。
いつから私たちは価値基準を他人の機嫌にゆだねるようになったのでしょうか。人に迷惑をかけないように、相手の気持ちを考えて行動しなさい。幼い頃から、大人にそう教えられて育ったことが関係しているのかもしれません。
「他人軸」で生きる人には様々なタイプがあります。
まずは、周囲の雰囲気を読み取り、他人の意図を察知して先回り、最適なコミュニケーションスキルを繰り出す「気遣いさん」。それから、相手の趣味をリサーチし、元気なフリをして話題を提供、場を明るく盛り上げ、家に帰れば、ぐったり疲れ切ってしまう「場回しさん」。
こうした人たちは、一般的には、ポジティブな印象で受け止められがちです。よく気が利くね、いつも周りのことまで目が行き届いていて素晴らしい、と言われることも多いはず。
けれども当の本人は、本当はそんなことしたくてしているわけではないのに、と思っていることもあるのです。率先して気遣いをし、その場にふさわしい会話がどんなものかを察知し、周りの人にも声をかけること。それをやりたくてやっているというより、やらざるを得ないからやっている、そういう役回りを周りから求められるので、仕方なくやっている、という人がとても多いのです。そして、周りの人の感情を読み取ることにエネルギーを使い果たし、疲弊してしまうのです。