ヤノフスキーの夜鷹は町を飛ぶ

寒冷地帯ばかりが広がり、獣人が覇権を握る世界。北方のルージア連邦中部、アニシン領領都、ヤノフスキー市。
政府公認であらゆる仕事をこなす「エージェント」と、エージェントに仕事の情報を提供する「情報屋」が多く集まるこの町には、「ヤノフスキーの夜鷹」と呼ばれる凄腕の情報屋がいることで知られていた。
集める情報には万に一つの嘘もなく、どんな小さな情報でも裏では大きな案件に繋がり、市内の隅々にまで目が届くと噂される情報屋は、決まってヤノフスキー市内の酒場を仕事場にしている。
その情報屋であり、表向きは酒や酒場についての紹介記事を書くエッセイストであるルスラーン・ナザロフは、毎夜市内を渡り歩きながら、静かに酒を飲み、自分の隣に座ったエージェントと情報のやり取りをしていた。
時には賑やかに、時には粛々と。時にはエッセイストの顔で、時には情報屋の顔で。朝の市場で、夜の酒場で。

これは、混沌と腐敗が蔓延る世界で、その腐敗を断罪するエージェントを裏から支える、一人の男の話である。

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