デッフェでお逢いしましょう――デッフェコレクション1――
6歳のときにはじめた仕事と30歳で縁の切れた僕は,ハローワークへ行く途中,道に迷って男に声をかけられる。誘われるまま男についていくと,白のバタフライ屋根を設けた建造物に陽光の降りそそぐ背後を市内電車が通りすぎる光景に行きあたる。建造物の玄関ドア傍らに薄オレンジのプレートがかかり「デッフェでお逢いしましょう」という細い金文字が躍っていた――「デッフェ」とは「出会い系カフェ」の略語だという。立食を楽しみながら交流をはかるパーティーも催しているために「ビュッフェ」の意味も兼ねている。社長は長身二枚目で手指の欠けた伽藍堂百覚(がらんどうおさ),スタッフは大御所女優そっくりの美しい松峰ノブ代(まつみねのぶよ)だ。デッフェでの採用が決まった僕――九十九折斎薔薇(つづらおりいばら)のはじめての仕事は,人気ユーチューバー星雲母(ほしきらら)の心がわりを憂える巣沼貢義(すぬまみつぎ)への対応だ。巣沼は雲母の行動を監視していた。所謂ストーカーだ。巣沼にかわってストーキングする羽目に陥った僕は雲母と出くわし,巣沼のストーキングを喋ってしまう。巣沼は情報漏洩を立腹するどころか,無理難題をふっかけたことを謝罪し,自宅へ招待する。雲母と自分が同郷であり雲母親子が壮絶な嫌がらせを受けて村を出たこと,雲母のために巣沼が拵えたという特殊な器具のことなどに話が及び,夜は更けていく。翌朝,巣沼は轢死する。巣沼をホームへ突きおとしたのは雲母だと証言する者があり,雲母は逮捕される。伽藍堂の紹介した弁護士により保釈されるも,その後雲母は失踪する。伽藍堂と僕はホームレスの老人から雲母の目撃情報を摑み,雲母が郷里足曳村(あしびきむら)の人間に拉致され,命の危険にさらされていると知る。足曳村へと急いだ。巨大な腕木門を構える村長窪元(くぼもと)の邸宅に突入し,度重なる襲撃を回避しながら雲母の救出を試みるが,ついに絶体絶命の危機に陥ってしまう……。伽藍堂の暗い過去も明らかにされ,僕は自分という存在の忌まわしさに苦しめられることになる。
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