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第十章 汝、近づき過ぎることなかれ

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学園祭まで残り2日。
本棚、アンティークテーブル、チェア、ランプなどが設置され教室はオシャレな漫画喫茶と化していた。

ん?漫画喫茶ではなくただの喫茶店をやるんじゃないのかって?

.....そのつもりだったよ僕は。でもアンティーク調のオシャレな喫茶店には本棚必須だろうと思って、DIYを1人でやってたらクラスメイトがワラワラ集まってきちゃって。結果漫画喫茶になっちゃった。

別に狙ってないよ??
本棚に僕の好きな小説とか並べたけど、別に狙って本棚を作ったわけじゃないから。結果的に漫画喫茶になっただけだから。暇があったら小説読んでサボろうとか考えてないから....うん。


「燈弥ーーー!!もう俺やだぁ.....!!」

「ぐふっ!?」


急な襲撃に倒れそうになった。
腰が.....!!
深刻なダメージに呻いていると、ふと腰にしがみつく重さが消えた。


「なぜ逃げるのです。僕は君に頼まれてやっているのに、頼んだ君が逃げるのは違うんじゃないですか?」

「うぅ~!口ベタベタするし、目もパサパサするし.....化粧やだ!!もう脱ぎたい!!重いし苦しいし.....中身出ちまうよ!!!」

「いいから行きますよ」

「燈弥ーーーー!!」

「危ない危ないっ、転んじゃいます!!兎君手を離してっ​────三上君ちょっと待ってください!!」


再度兎君にしがみつかれ、危うく転倒しかけた。だから兎君を引っ張る三上君に、急いで待ったをかける。すると彼は大人しく引っ張るのをやめてくれた。まぁ、掴むその手は離さなかったが。


「.....人に迷惑をかけてはダメでしょう、兎道君。一条君が困ってますよ」

爽爾そうじが引っ張るからだろ!?」

「2人とも落ち着いて......」

「「......」」


よしよし、そのまま動かないでね。
というか兎君、すっごい格好してるね。ゴスロリってやつかな?
黒と白のツートンで、裾部分が何枚も生地を重ね合わせたようにヒラヒラしている。それに女の子のように腰にくびれが.....まさかコルセット着けてる!?
他にも頭にヘッドドレスとかつけてるし、結構ガチのヤツでは?

短かいはずの髪もエクステをつけているのか、何故かツインテールになってる。あ、でもメイクは闇系の暗い色を使わず、ピンクというか....優しい色で化粧されていた。


「三上君.....兎君の今の姿が美コン当日の装いですか?」

「もちろんです。いい出来ですよね。力作なんです」

「どこかだよ!!やだよ俺っ、こんな重い服!!腹も締め付けられて苦しいし!!」

「これで優勝間違いなし。さぁ兎道君、最終確認のために向こうでお色直しを....」

「話聞けって!!うぅ~燈弥ーー!!」


あ~.....うん、まぁ助け舟は出してあげるよ。
僕も今の兎君の姿はちょっと思うとこあるし。


「三上君、少しいいですか?」

「.....はい」

「兎君にこの装いはちょっと合わないと思うんですけど....」

「ふむ、聞きましょう。ああでも、場合によっては戦争も辞さないですよ?」


こわっ。.....言葉を慎重に選ばないとね。


「兎君の服はイメージを暗いものにしてしまいます。退廃的、闇、死、地獄....などなど。実際に三上君はそういうのをイメージして服を作りましたよね?」

「まぁ....はい。絶対に似合うと思ったので」

「....確かに似合いはするでしょう。ですが、先程並べた言葉はどれも兎君に合わないと思いませんか?」

「!!」

「兎君が退廃的?闇?死?.....いいえ、そんなもの微塵も彼から感じられない。似合いはしても、彼の性格から離れた装いは彼本来の魅力を引き出すことはできない。僕はそう思ったのですが……」


これは僕の主観。やっぱり優勝目指すなら着る本人の魅力を引き出すテーマがいいよね。


「う、確かにそう.....かもしれません。兎道君に濃いめの色を使ってメイクしなかったのは無意識にダークさを回避していたから?ああ、でも美コンまで残り2日しかない。今更コンセプトを変えるとなると到底間に合わない。だからといって彼に似合う思いつきを捨てるのも惜しい。イケますかね?2日.....鳥羽君に手伝って貰えばわんちゃん....こうしちゃいられないです!!兎道君!その服破り捨てて貰っても構いません。今すぐ採寸しますよ!」

「えぇ!?脱ぎたかったけど、これを破り捨てるのはちょっと....!だって爽爾が一生懸命作ったやつだろ!?」

「退路は絶つべきです。その服があるから最低間に合わなくてもいいという生温い考えを完全に捨てるため。僕を追い込むためにも破り捨ててください」

「うぇ.....気が引ける」

「モタモタしないでください愚図!!時間がないんですよ!ああっ!もういいです。とにかく僕の部屋に行きますよ!!」

「ひぃ!!と、燈弥....」


伸ばされる手を素早く回避!!
行ってらっしゃーい。僕はちゃんと君への助け舟を出したからもういいよね。


さて、風紀に行きますか。当日の見回りについて委員長に確認しないといけないことがあるから。











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