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第四十一話 やつらに与える負の影響は相当なものだろう

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「真壁どん、コージどん、流華どん、刷りたてでごわす……!」

「「「お、おおっ……!」」」

 駄菓子屋の二階で、六さんに貰った新聞を持つ手が震える。そこには汚れた英雄という一面の見出しで、目を見開いて俺たちに襲い掛かろうとする水谷皇樹の写真とともに、事の詳細が記載されていたのだ。

 この日を何度夢見たことだろう。あまりにも嬉しくて目頭が熱くなり、視界が滲むのは時間の問題だった。それで何度も何度も目を擦って確認するが、紛れもなく本物だ。正真正銘のスクープ記事なんだ、これは……。

 俺たちの、すなわち水谷の被害者のインタビューも載ってる。何々――

『びっくりした。やられるかなと思ったけど、相手が躓いてくれて助かった。思ったより英雄は大したことがなかった』

 俺のことだ。なんか恥ずかしいな。

『初めて101階層へ行くってことで、どんな場所だろうとカメラを持って構えていたところで、英雄の一人に襲われて運よくシャッターチャンスが訪れました。まさか、彼が無差別殺人の犯人だったとは。ただただ残念でなりません……』

 これ、口調は違うけど六さんだな。さすが、記者なだけあって読ませる文章だ。

『とても、とても怖かったです。死ぬかと思って。まさか、英雄の一人が犯人だったなんて夢にも思いませんでした……』

 流華だな、これは。相変わらず猫被ってるけど、それがなんともいい味を出して読者に伝わりやすくなってるかもしれない。

『よくテレビとかで見る顔だったんで、本当に驚いたのと同時に怒りが込み上げてきやした。英雄どころか、あれじゃ悪魔そのものでやんすよ……』

 コージはそのまんまだったな。でもそれが却ってナチュラルな感じで、本音としてダイレクトに読み手に伝わりそうだと感じた。これなら、やつらに与える負の影響は相当なものだろう。

「――あ、あのっ、テレビで英雄さんについてやってますよっ!」

「「「「えっ……!?」」」」

 理沙が良い知らせを届けてくれたので、急いで一階の客間へと急ぐ。テレビはあの部屋にしかないんだ。そこには既に鬼婆の姿もあり、座布団の上でせんべいを齧りながら食い入るように画面を見ていた。

『――んー、これはですね、えー、英雄を妬む者たちの陰謀である可能性もありましてですね……』

 一人の偉そうな遺跡評論家が薄ら笑いを浮かべながらふざけたことを抜かしたが、怒声とともに色んなやつらから突っ込まれて苦い顔をした。

『こうしてちゃんとした証拠も出てきたわけですし、最早言い逃れは出来ないでしょう!』

『そうですよ。元々きな臭い話ばかり出ていた名ばかりの連中じゃないですか』

『叩けば叩くほど埃が出そうですな』

 まったくその通りで、英雄を擁護してるやつが一方的に押されていてすこぶる気分が良かった。町の人の声なんかも出てきて、ショックだったとか失望したとかそんな痛快なインタビューのあと、『ほかの英雄たちに動きがあったようです』というアナウンスととともに画面が切り替わり、英雄たち――河波琉璃と白崎丈瑠――の小汚い面々が映し出された。やたらと騒々しい。

『今は、彼を信じるしかありません。これは何かの間違いです。きっと……』

『そうだ、水谷はこんなことをするやつじゃない。誰かに嵌められたんだ! 多分……』

 河波と白崎の畜生夫婦が高級タワーマンションから出てきたところをマスコミに囲まれ、幾つものマイクを向けられている様子。あくまでも自分たちには火の粉が及ばないように、いざというときは切ろうっていうスタンスが見え隠れしている。卑劣なあいつららしい。

『あのー、白崎さん、ところで夫婦仲については何か進展とかあるんですか?』

『よ……余計なことを聞くな! もう終わったことだ!』

『そ、そんな……まだ、まだ終わってないよぉ……え、えぐっ……』

 河波が泣き出したところで物凄い数のフラッシュが焚かれた。夫婦仲は聞くまでもなく終わってるようだ。ざまあないな。だが、これで終わったと思うなよ、クズども……。
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