ジタバタしてるだけに見える

「あれ?  私どうなったのかしら?」

 メイドとして働いている伯爵家で倒れていた私。
 正確に言えば、ここの家のお嬢様に足をかけられて、転んだのだ。

 私はリビドー・ダンロ男爵の庶子アガサ。母が亡くなり引き取られたが、男爵夫人マーブル様は優しい人だった。

「女はいつの時代でも生き辛いわね。私も父の言うままにここに嫁ぎ、夫になった男には何も言えないのよ」

 なんて疲れた顔をして、明け透けな話もしてくれていた。気心が知れる程好きになり、私は本当の母のように家事や身の回りのことを手伝い尽くした。
 一人でも味方がいるのは、とても嬉しいことだった。逆に血の繋がった筈の、リビドー様の顔を見たのは数える程度だ。

 リビドー様はマーブル様のことはほったらかしで、多くの愛人を囲っている。本邸であるここに、戻ることは殆どない。

 領地経営はマーブル様が行い、本人は社交と言って遊んでいるだけ。親に決められた結婚を嫌がり、マーブル様には指一本も触れていないそうだ。当然子供もいない。


 かと言って庶子の私が、後を継ぐことはないと思う。
 きっと政略結婚と言う駒に使うつもりだろう。
 そうでなければ、今まで歯牙にもかけず祖母と暮らしていた私を、15歳になってから引き離すことはない。
 そのことをマーブル様も気づいているのだ。
 何か月か過ぎた頃、マーブル様がこう告げてきた。


「貴女は外で働いて、お金を貯めなさい。いつでも此処から逃げられるように。大丈夫よ、リビドー様には学校に行ってるとでも言っておくから」

 私は瞬いてマーブル様を見た。
 頷くマーブル様は言う。
「貴女は逃げなさい。何の誓約もないのだから」

 その話をした後、伯爵家への仕事の紹介状を渡してくれたのだ。

(小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています)
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