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3章 コスで反逆

63話 クラン結成

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「エリーヌさん、お願いしますよ口添えしてください」

「アタシにそんな権限はないのでダメです」


最近受付にいると、リュウ君の訓練に違う意味で参加したいと、何度も何度も言ってくる人たちばかりで嫌になります、前も断っていたけど最近また増えました、それと言うのもリュウ君の訓練が原因ね、ゴールドになったイーザスさんの通過儀礼みたいになってしまい、参加したいと言ってくる人たちが増えてしまったの。
それも悪いことに、彼らは訓練の参加が目的じゃないわ、イーザスさんたちとの接点がほしいだけの人たちです、そんな彼らは1時間以内に必ずと言って良い程、ギブアップして訓練場を飛び出してきます。


「そこを何とか、下っ端でもいいから入りたいんですよ俺は」

「それなら訓練に耐えれる様になってください、あなた確か、数日前に訓練場から30分もしないうちに出てきた方でしょ」


最長記録は1分です、リュウ君に聞いた内容だけど、その男は訓練場に入ってそうそう、リュウ君に襲い掛かり返り討ちにあったのよ、今では純粋に訓練がしたい人たちは厳選してます、ほとんどがリュウ君と顔見知りの人たちよ、クエストを一緒に行った事のある人達やアジュア君の様に救われた人、今だってここを介さず横を素通りして行きました、本来は訓練場に直接向かっても良いのよ、訓練が目的ならね。


「だってさエリーヌさん、ただ走ってるだけなんて意味ないだろ」

「それが分からないから許可できないんです、次の方が後ろに並んでいます、お引取りください」


営業妨害になりかねない、そう言われ受付を離れた彼らは今後もあのままでしょう、アイアンで成績がとまり壁にぶつかってしまった、それがどうしてなのかも分かってないのよ。
アタシがここで断るのは、一度リュウ君の訓練に参加し、それに耐えられず抜けた人たちです、過酷な訓練で鬼教官が指導する、そんな噂が流れる程の訓練よ。


「見た目綺麗で可愛いのに、あの表情のまま怒ってくるから笑顔の鬼とか言われてる、かわいそうね」


訓練場の方を見てため息をついたわ、逃げていった人たちは分かってないのよ、リュウ君の訓練で手に入るスキルはクランでも必須の物だってね。
参加すれば良いだけと思ってる人は必ず落ちます、リュウ君の訓練は簡単じゃないし、その先のクランでの戦いは容易くないの。


「死んでしまわない為の線引き、訓練を受けてる冒険者が結果を出し、どんどん実力を付けるから焦るんでしょうね」


次の冒険者の受付をこなして呟いたわ、実力を上げてるのは訓練のおかげ、でもそれは努力しているからよ、それを忘れてはいけないの。
リュウ君の訓練は、見ていればそれが分かるようになってます、要らない訓練と目を逸らし見なければ、得られるスキルも覚えないし強くもなれない、だから意味がないと攻撃したり出ていってしまうの。
その話題を持って、イーザスさんたちのところに向かった冒険者もいたわ、一から鍛えなおして来いっと言われたらしいわよ。


「相変わらず、独り言が多いですねエリーヌさん」

「あらアレーン君じゃない、久しぶりね」


次の冒険者が誰なのか分かってなくて、ちょっとびっくりです、アレーン君たち5人は立派になったわ、最速でスチールになった期待の新人なのよ。
頑張ってるわねと激励を送り用件を聞いたわ、カードを見せてくれたのでクエストの用件です、どんなクエストをこなしてきたのかとても楽しみ、魔道具にカードを通しビックリよ。


「みみ、ミスリルリザードを狩ったの!?」


ここら辺ではいないモンスターです、どうして?っと詳細を見ると、西の山の名前が記載されています、そこはイーザスさんたちが土龍を倒した場所です。
何かあると調査の依頼を受けたそうなの、調査だけの予定がそんな物を倒してきたとビックリです。


「俺たちもビックリだったよ、だけど朗報でしょエリーヌさん」

「そ、そうだけど・・・ツダント山に、まさかミスリル鉱石が眠ってるなんて思わないわ」


だから土龍もいたんだと、かなり警戒しないといけないのが分かったわ、これは少ししたら遠征が組まれるかもしれません。
クエストの受理を行いカードを渡すと、ソワソワしてるわ、訓練場の方を見てるから彼に会いたいのね。


「今はダメよアレーン君」

「分かってますよエリーヌさん、でも・・・まだアイアンなんですか?」


その答えは頷くだけにしたわ、リュウ君はランクアップを望んでない、もうギルドの貢献も経験も十分なの、だけど試験を受けようとしないわ、もうこっちは準備万端なのにね。
皆からもリュウ君に伝えてとお願いしたけど、5人とも顔を逸らしたわ、どうして嫌なのよ。


「アタシたちが言っても聞かないの、言ってあげてよアレーン君」

「それは・・・ちょっと」


何が嫌なのか言えないと手で遮ってきます、何かあるのは分かります、だから物で釣る事にしたわ、最近はやりの銀貨6枚もするというドラゴン肉のパン包み焼きを提案します。
1つで2ヶ月分の給金が飛ぶ高級品、それを聞き表情が変わったわ、乗ってきてニヤリと笑ってアタシは更にダメ出しです。


「肉は柔らかく、それでいて味が溢れるらしいわ、パンはふわっふわで、野菜はシャキシャキ音がするくらい新鮮なんだって、想像しただけで食べたくなるわ」


もちろんアタシの奢りじゃないわ、経費で落とすわよ、アレーン君たちが悩んだ末に教えてくれた内容は、訓練が辛くなるというものでした、訓練場を見たのはそれも原因だったのね。
うんうん頷いて、アタシはお願いしたわ、だって言えるのはもうこの子たちだけよ。


「でも・・・ちょっと後悔、ごめんねみんな」


頑張って伝えますっと意気込んで訓練場に入った彼らは、しばらくしてばったりと倒れて出て来たの、ごめんねっと手を合わせる事しか出来なかったわ、その後ろからリュウ君が良い笑顔で出てきたの、アタシを目標に歩いてきてるわ。
いつもは嬉しくてドキドキなんだけど、今日は違う意味でドキドキよ、リュウ君の笑顔が鬼になっています。


「エリーヌさん、分かってますよね?」

「ご、ごめんねリュウ君・・・でもね聞いてちょうだい、しっかりと準備は出来てるしみんなあなたに期待してるの、イーザスさんたちも動いてくれるわ、だから絶対お姉さんには見つからない」


ギルドの噂もリュウ君の名前が出ないようにしてあるわ、アレーン君たちが最短記録を作ったから、リュウ君のランクアップも話題にならない、貴族が引き抜きに来ても、ギルドの指導者と言う事で拒否も出来る。
ランクアップを勧めるのは、それだけが理由じゃないと付け足します、先ほどの遠征が宣言される可能性があると、アタシは緊急性を知らせたの。


「アレーンたちが言ってた奴ですね」

「そうよリュウ君、相手は土龍並のモンスターが相手かもしれない、そんな遠征が起きるならリュウ君の戦力はほしいのよ、でもアイアンクラスはそんな上級の遠征に参加できない、だからお願いよ」


普通は足手まといで参加できません、ギルマスが別口で要請すればクラス関係なく参加はできます、でも目立つのでリュウ君には使えません。
だからお願いと手を合わせたの、リュウ君が嫌がるから言わないようにはしていたわ、でも今回は心配です。


「僕が参加しても、目立たないように動きますよ、遠征も来ないかもしれない」

「遠征は来るわ、ミスリルが取れるとなれば国が動くの、だから騎士たちも参加の大遠征になる」


イーザスさんたちが参加するし、もともと目立たないと付け加えたわ、一人で動けば目立つけどアレーンたちと一緒なら問題ない、だからリュウ君には参加条件のスチールクラスになっててほしいの。
みんなが守ってくれる、リュウ君はそれだけアタシたちに必要な人よ、ちょっと恥ずかしいことを言ったけど、しっかりと伝えなくちゃいけない事よね。


「皆さんが頑張ってくれるのは嬉しいです・・・分かりました」

「ほんと!?」

「皆さんに答えないと、その頑張りが無駄になりますからね・・・ありがとうございます」


突然のお礼を言われ、アタシすごく顔が熱いです、素直なお礼ってすごくうれしいわ、もう飛び上がりたいくらいよ。
頑張って顔には出さずリュウ君を見送ります、それを見てパーシェントが寄ってきたわ、羨ましそうにしてね。


「羨ましいでしょ」

「うぅ~・・・羨ましい」


パーシェントが素直に感想を言ってきたわ、その後お酒を奢らされたけど、美味しいお酒を飲めて楽しかったわ。
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