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3章 コスで反逆

65話 遠征準備

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「冒険者なんて不要です国王陛下、あそこは我が領地、資源として国には納品します、採掘はワタシの兵がします」


僕たちの目の前でイーザスさんを指差して一人の領主さんが宣言しました、彼はツダント山周辺の領主サーディ・ブリリア伯爵さんです。
国を挙げての計画だと言うのに自分たちの利益しか考えてません、僕たちはそれでも良いけど国王陛下はそうじゃないです。
失敗は許されないから全力で兵士を向かわせる、そう言って僕たちも参加させるように領主さんに命令したんです。


「しかし国王陛下!冒険者などは金の亡者です、成功したら報酬を寄こせと言ってきます」

「それで良いではないかサーディ伯爵、今困るのは失敗する事だ、何を置いても早急に採掘できるようにしなくてはならん、分かるだろう」


国王陛下が強調して指示を出しました、それは領主さんは頷いて賛成したけど、やっぱり嫌みたいです、それを注意しないあたり、弱腰な国王陛下さんだなっと、僕はちょっと心配になりました。
そんな所はアサラン君に似てるかも、そう思って見返すと親近感は覚えたよ、だからちょっと応援したくなりました。


「やっぱり嫌な人が多いですねファンシャさん」

「そうねぇサースラ、でも報酬は約束されたわ、頑張りましょ」


さすがゴールドクラスのメンバーです、怒っていても表には出しません、下のクラスの人達ならあそこで怒鳴ったりしたはずなんだ、訓練場で僕を襲ってくるくらいだからね。
話し合いが終わったので、お城から出ようとみんなが席を立ちます、そこで僕はみんなに声を掛け寄り道を提案します、ちょっとみんなに渡したいものがあるんですよ。


「それで・・・これを俺達にか?」


別室に移った僕は、じゃじゃ~んって感じでみんなの前でポーズを取ります、部屋に並んでいる装備を見て、イーザスさんたちは戸惑っていました、今回限りの特別仕様だと、前置きをして装備のご説明を始めます。
最初に渡すのはゴールドクラスの人たちです、この後アースロさんたち参加メンバーにも渡します。


「リュウ君、気持ちは嬉しいんだが・・・俺たちの装備を見ても何も思わないか?」

「分かってますよイーザスさん、見た目同じ装備に見えますけど、この遠征の為に特別に仕上げた物です」


今自分たちが装備しているのと同じ素材なので、イーザスさんたちは意味ないだろうと思っていたみたいです、ミスリル装備は高いですから、同じでは勿体ないという事らしいよ。
同じなわけないじゃないですか、そう言って僕は説得します、糸が特殊で丈夫とかミスリル素材もちょっと手を加えてるとアピールです、これには僕のコスの力を付けたいから作ったんだ、それにもう一つ理由があります。


「しかしなリュウ君、今回だけとなると勿体ないだろう」

「この遠征は失敗が出来ません、ちょっと嫌な予感がしてるので装備してください」


国王陛下は信じられそうです、でも僕は貴族を信じる事はしません、だから領主は何かしてくると思っています、みんなにはその対策としてチート装備を渡すんだ、もちろん完全コス力とまでは行きません、似ているゲームキャラと言っても装備だけになってます、それはかなり低いコス力になっちゃうけど、無いよりは全然マシです。
ゲームの中でも発動する装備統一特技【能力2倍】が勝手に付きます、イーザスさんたちに性能を教え、決戦日までに装備に慣れておくように伝えました、訓練場で特訓しましょうっとお願いしました、いやそうな顔をしたのは半数です、僕の訓練はつらいですからね。


「どれくらい違うのかによるな、今すぐ着てはダメなのかリュウ君?」

「僕たち男性陣は着替える事は出来ますよ、でも衝立もないですし女性は下着になるでしょ、自分たちだけ楽しむのはダメですよねイーザスさん」


女性冒険者全員に睨まれ、イーザスさんは引きました、収納に装備をしまうしかなくなり少ししょんぼりしていたよ。
本番は3日後、僕はまだ用事があるのでイーザスさんたちに先にギルドに行っててもらう様に言います、イーザスさんたちが部屋を退出したのを見送り、僕はさっきの会議室に戻ります、そこには冒険者ギルドのマスターさんが待っていました、頭を下げお礼を言ったんです。


「装備のお部屋を用意してくれて、ありがとうございますネミナさん」

「良いんだよリュウ君、アタシもお礼は沢山貰ったからね、これから陛下と飲み明かす予定さ」


ネミナさんが手を振って部屋を出ていきます、エリーヌさんたちのおかげもあり、国王陛下とギルマスと仲良くなったんだ、おかげで根回しが簡単にできました、僕は頼れる人たちがいて頼もしいよ。
国王陛下と仲良くなれば、きっとこの国は変えられる、孤児院もみんなも守って見せるよ。


「その為にも、まずはここの執事さんとメイドさんからだね、みんなの衣装を作るよ」


国王陛下から城の出入りを自由にして良いと言われました、僕はそこから味方を作って聞く為に進めます、相手は自分の事しか考えない貴族たち、情報を貰って軽いお仕置きを加えつつ変えていきます。
部屋を出て僕はギルドに向かいます、執事さんたちの挨拶は分身たちの担当です、遠征まで3日、出来る事は全てやって行きますよ。


「陛下にも困ったものですな、エール侯爵殿」


ある屋敷では、僕が思っている事が計画される話し合いがされていました、まったく困るよね。
分身は天井裏で聞き、どうお仕置きしようかと考えます、下ではそれを知らず話が進みました。


「まぁ力の無いトップはあんなものだろうサーディ伯爵、あれは冒険者ギルドにも抗えない、おかげで今回はっきりした、兼ねてより準備していた彼の訓練はどうだ?」

「はい、今回の遠征に参加させます、彼もいよいよかと乗り気ですからね」


これで政権は我々の物、ふたりの貴族はそれが決まり笑い合います、密かに準備していた事を動かす機会が遂に来た、侯爵はそう言って伯爵に伝えます、兵士も遠征に行く事にすれば容易に集められる、誰にも気づかれないと笑ったんだ。
他の貴族たちにも伝え、総力戦を画策します、僕が遠征の準備を始めてる中、彼らも着々と作戦を進めていました、そしてある事実が分身たちによって僕に知らされずに進んだんです。
本体の僕がトラウマを乗り切る試練、あいつと出会う前兆だったんだよ。
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