A5サイズのジップロック〜致死量の絶望を飲み干し、ただ只管に生き延びた記録〜
日常の気配が色濃く残る、ありふれた2Kの部屋。
いつもと変わらないはずのその空間で、私は茶色いカーテンを固く閉ざし、リビングのソファの下にへたり込んで泣いていた。
見上げるソファの上には、A5サイズのジップロックが置かれている。
パンパンに膨れ上がったその袋の口を開けると、中から数錠の薬が弾け飛んだ。
ザイラス、ソラナックス、サイレース、ハルシオン……。
市販薬ではない、精神を強制的にシャットダウンさせるための処方薬たち。私はシートから無感情に薬を押し出し、手のひらに乗せては、次々と胃の奥へ放り込んでいった。
これを飲めば、やっと楽になれる。その思いだけを信じて、涙を流しながら飲み続けた。
途中からの記憶はない。
ただ、後になって知らされた。あのジップロックに詰め込まれた膨大な量の薬を、私は無意識のまま、すべて飲み干していたのだと。
ぼんやりと水底のように滲んでいく景色の中で、私の時間は完全に途切れた。
——まぶしい。
次に目を開けたとき、真っ先に感じたのは、朝の寝起きのようなごく「普通」の目覚めの感覚だった。
ただ、視界に飛び込んでくる光があまりにも白く、強烈で、思わず目を細める。
そこは、カーテンで仕切られた無機質で狭い空間だった。
体を動かそうとして、違和感に気づく。両手も、両脚も、ベッドに固く固定されていて1ミリも動かせない。
「……っ」
声を出そうとした瞬間、喉の奥で「ごふっ」と異音が鳴った。
息苦しさはない。視線を下へ落とすと、自分の鼻と口から透明な管が伸びているのが見えた。
人の声は、まったく聞こえない。
ただ、私の左後方から、一定のリズムを刻む機械音だけが冷たく響いていた。
自分がどうなったのか、何もわからない。
ただ、私は目を覚ました。
薬は胃洗浄では間に合わないほど血液に溶け込み、脳死判定の少し手前までいった私が、なぜか今、この眩しい白い光の中で息をしている。
ベッドの傍らで親友がポロポロと涙をこぼしていたことや、「奇跡が起きた」という言葉を認識するのは、もう少し後のことだ。
この瞬間の私にあったのは、ただ「生かされてしまった」という圧倒的な事実だけだった。
あの、すべてを搾取され、尊厳を踏みにじられた「底なし沼」のような日々から、私はまだ、逃げ切れていない——。
いつもと変わらないはずのその空間で、私は茶色いカーテンを固く閉ざし、リビングのソファの下にへたり込んで泣いていた。
見上げるソファの上には、A5サイズのジップロックが置かれている。
パンパンに膨れ上がったその袋の口を開けると、中から数錠の薬が弾け飛んだ。
ザイラス、ソラナックス、サイレース、ハルシオン……。
市販薬ではない、精神を強制的にシャットダウンさせるための処方薬たち。私はシートから無感情に薬を押し出し、手のひらに乗せては、次々と胃の奥へ放り込んでいった。
これを飲めば、やっと楽になれる。その思いだけを信じて、涙を流しながら飲み続けた。
途中からの記憶はない。
ただ、後になって知らされた。あのジップロックに詰め込まれた膨大な量の薬を、私は無意識のまま、すべて飲み干していたのだと。
ぼんやりと水底のように滲んでいく景色の中で、私の時間は完全に途切れた。
——まぶしい。
次に目を開けたとき、真っ先に感じたのは、朝の寝起きのようなごく「普通」の目覚めの感覚だった。
ただ、視界に飛び込んでくる光があまりにも白く、強烈で、思わず目を細める。
そこは、カーテンで仕切られた無機質で狭い空間だった。
体を動かそうとして、違和感に気づく。両手も、両脚も、ベッドに固く固定されていて1ミリも動かせない。
「……っ」
声を出そうとした瞬間、喉の奥で「ごふっ」と異音が鳴った。
息苦しさはない。視線を下へ落とすと、自分の鼻と口から透明な管が伸びているのが見えた。
人の声は、まったく聞こえない。
ただ、私の左後方から、一定のリズムを刻む機械音だけが冷たく響いていた。
自分がどうなったのか、何もわからない。
ただ、私は目を覚ました。
薬は胃洗浄では間に合わないほど血液に溶け込み、脳死判定の少し手前までいった私が、なぜか今、この眩しい白い光の中で息をしている。
ベッドの傍らで親友がポロポロと涙をこぼしていたことや、「奇跡が起きた」という言葉を認識するのは、もう少し後のことだ。
この瞬間の私にあったのは、ただ「生かされてしまった」という圧倒的な事実だけだった。
あの、すべてを搾取され、尊厳を踏みにじられた「底なし沼」のような日々から、私はまだ、逃げ切れていない——。
第2章:アップルリングとダイヤの宝探し
第2章3話漫画の続きと、奪われた「拒否権」
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
朔望大学医学部付属病院/ White Dictator
僕君・御月様
キャラ文芸
White Dictator______通称:『白衣の独裁者』
<ホワイト・ディクテイター>
⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯
圧倒的な「実力」と「技術」で捩じ伏せ・現場を支配する凄腕たち。
___ ごく僅かな一瞬の隙も逃さない神手の集まり。
※ごめんなさい!悩みすぎて遅れてます!