魔王に拾われた王子

かつて繁栄を誇ったセリオス王国は、強大なヴァルム帝国との戦争に敗れ、滅亡した。
 王族は皆殺しにされ、生き残りは誰一人いない——はずだった。

 しかし、一人だけ、幼き王子レオネルは密かに逃げ延びていた。

 彷徨い込んだのは、人間が決して足を踏み入れてはならない「奈落の森」。
 そこは悪魔たちの支配する魔の領域であり、死にかけた人間の魂は貪り尽くされる運命にあった。

 そして、そんな王子の前に現れたのは——

 「災厄の魔王」リリエル。

 無慈悲で冷酷、魂を喰らい生きる絶対的な存在。
 本来ならば、彼女の手によって幼き王子は死ぬはずだった。

 しかし、レオネルの澄んだ蒼碧の瞳を見た瞬間、彼女はなぜか手を止めた。

 「お母さんなの?」

 ——それは、あまりにも純粋な問いかけ。

 そして魔王は、気まぐれにも「育てる」ことを決めた。
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