博士は、 なぜ、頭を抱えたのか。
二千五十年十一月。横浜のある病院の癌病棟の一室。ベッドには六十過ぎの男が点滴を受けて静かに横たわっている。末期癌を患っていた。が、どうしたわけか夢を見るような幸せそうな笑みを湛えている。
小野寺梛乃と桧胡は大学三年生の双子だった。天才理論物理学者を父に持つ。父親の名は健(たけし)と言った。五十路に差し掛かっていた。母親は由美という名で科学者だったが、二人が中二の時に癌で他界していた。由美は特に人工知能の分野で世界トップレベルの実績を残していた。
由美の形見がジュンだった。世界で初めての三次元人工頭脳を搭載した人型アンドロイドとして完成させたのだ。その後、小野寺健はジュンと共に「物質縮小マシン」と「物質変換装置」を完成させた。
それを使い、ジュンと二人の娘に、末期ガン患者の治療を極秘裡に行わせていた。男が幸せそうな笑みを湛えているのはそういう訳だ。
時を同じくして、世間では謎めいた事件が起こっていた。消失事件だった。小野寺博士にはゼミの学生が少なかったが、みな優秀だった。小野寺は事件に注目した。調査を進めるうちに、この事件はマッドサイエンティストの山縣博士が起こしていることがわかった。
一方、山縣は富士の裾野の溶岩ドーム跡の地下にある秘密基地で、世界征服を画策していた。全くの偶然だったが、小野寺博士と同じ装置を開発していた。さらに、攻撃用の兵器まで。部下は五人しかいないが、この技術を用いればそれで十分だった。
山縣のテロの狙いがはっきりした今、小野寺はそれを阻止しなければならなくなった。それは、山縣に小野寺の存在を知られたことも理由の一つだが、過去の因縁もあるのだった。
小野寺たちのほか、世界の誰も気づかないうちに互いの準備が進められ、戦いが始まった。
夢のような科学と技術のぶつかり合いは、人類すべてを巻き込むことになった。しかし、最強を誇る軍事国家でも、警察組織でも、その戦いに参加することはできなかった。あるはずの武器がなくなったからだ。
小野寺たちは、アンドロイドのジュンを中心に楽しくも真剣に山縣たちを倒すべく、一丸となって戦う。ナノピコのミクロサイズまでの世界で戦いが展開される。
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