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なんで話を振った?

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 そんなジェイク様こと文官王子は言った。

「分からないと素直に言えるところは見込みがあっていいね。ねぇ、マイク」

 なんで急に人に話を振った?

 文官王子の後ろに立っているのが、護衛騎士のマイク様だ。

 うん、こっちも様を付けて呼ぶと落ち着かないんだけどな。
 マイクって名前の騎士もうちには何人もいるんだ。
 ジェイクもマイクもこの国ではよくある名前なんだよ。

 それにこっちの男は、王家直属とはいえ騎士だ。
 騎士相手と思えば、敬称を付けることがとても落ち着かなかった。

 というわけで、私の中ではただの護衛騎士。
 うん、誰の、とか頭の中で考えるときにいちいち付けなくてもいいよな?

 その護衛騎士はずっと、それこそ文官王子に出会ってからこれまでずーっと。
 王子の後ろに控えるだけで、発言しない人だった。

 あ、違った。一度だけ話していたな。
 文官王子のやたら長い挨拶と名前呼び云々の話のあとに、護衛騎士は名乗った。

 マイクという名前としばらく世話になるというそれだけ。


 ここで私には王家が何を考えているか分からなくなったんだよな。
 
 王子様の護衛が一人だったんだよ。


 私たちがいれば、王子様がこの城で危険な目に合うことはまずないよ。
 だから別に護衛が一人でもこちらは何ら構わないのだけれど。

 ここまでの道中ではさすがにあと数名の騎士が護衛をしてきたと聞いている。
 だがそいつらは王子をこの地に送り届けるとあっさりと帰った。
 迎えに来る約束もしていなかったようだぞ。

 で、残ったのがこの無口な護衛騎士である。


 実は辺境伯家のこと、大分信頼しているのか?と問いたい。
 誰に?これは王様だな。

 んでもって、実はこの文官王子は初日から危なかった。

 王子様が乗っているとは思えない馬車で現れたせいなんだけどね。
 何の紋章もない質素な馬車で少ない護衛と共にやって来て、城に通せと言われたらそれは怪しいわな。

 王家の書状を見せられた城壁の騎士たちは、それが本物か見極めることが出来なかった。

 まぁ、そうだよな。
 王家の書状なんて見る機会は稀だ。
 稀どころか騎士の多くは目にする機会が一生ない。
 それに書状なんぞは偽造が出来る。

 で、どうしたか。
 結局伝令を受けて城壁まで様子を見に行った姉が、見知った人だったという理由でことなきを得たのだけれど。

 いや、ことはあったな。
 城壁の騎士たちは辺境伯家からの返答を待つ間、王子様一行を城壁内の一室に拘束したんだ。
 手荒なことをせずに済んだのは良かったけれど、監禁されたと騒がれてもおかしくはなかった。
 それは文官王子が寛大な心を持っていたことに感謝しないとならないね。

 で、私といえばおかげで仕事が増えた。
 城壁の騎士たちを念入りに鍛えなければならなくなったんだよ。

 王都から文官が来ることは聞かされていたはずで。
 それが王子とは知らなかったとしてもだ。
 王家が寄越した客なんだから丁重に扱えよって言い含めてあったはずでな。

 なんで鉄格子のある部屋に拘束した?
 他に部屋がない?ならせめてお茶でも出してそこはもてなしておけよ。
 偽者だったと分かってから好きにすりゃあ良かったんだ。

 あぁそういやその対象者にもジェイクとマイクがいたな。

 ジェイクとマイク。名前が似ていると気が付いた。
 これはわざとなのか?仲良しか?

 まぁそんなことはいい。
 なぜここで護衛騎士に話を振ったのか、私には文官王子の行動がさっぱりと理解出来ずにいたんだ。



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