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あおしぃ
# 作品紹介文 ---  「戦力として計算できない。お前の席はない」  三年間、Sランクパーティの荷物を運び続けた俺——セル・ヴァーンは、あっさり解雇された。  怒鳴らなかった。泣かなかった。  引き継ぎ書きだけ置いて、夜の王都に出た。 ---  その夜から、銀の牙は負け続けた。  翌週、惨敗。  翌月、連敗。  三ヶ月後、Sランクから転落。  解雇を告げたリーダー・ガードは、ようやく気づいた。  「あいつは何をしていたんだ」  今さら遅い。  俺は気づいていない。 ---  行くあてもなく歩いていたら、路傍に倒れた元冒険者を拾った。  「腹が減っていますか」と声をかけた。  「断る理由がないので」と言って補給食を渡した。  一人が二人になり、気づけば四人になっていた。  「全力で戦うと邪魔だと言われた」剣士のリナ。  「詠唱が失敗して仲間を傷つけた記憶が消えない」魔法使いのクロエ。  「守ろうとするたびに足手まといと言われ続けた」盾役のミア。  「信頼した仲間に情報を売られた」斥候のフィン。  全員、どこかで一度折れた冒険者たちだ。  俺には、彼女たちの傷を癒す力なんてない。  ただ、補給食を切らさないようにしているだけだ。  「断る理由がないので」と言って、一緒に歩き始めた。 ---  すると、おかしなことが起きた。  リナが、信じられないほど動ける。  クロエの詠唱が、一度も失敗しない。  ミアの盾が、Sランクの攻撃を止める。  フィンの情報が、毎回完璧に当たる。  スキル鑑定士が蒼白になった。  「後方全域支援——神域。前代未聞です」  俺には、心当たりがない。  荷物の重心を整えただけだ。  本人が一番気づいていない。  なのに全員が最強になっていく。  解雇した元パーティは今日も負けている。  「あいつがいたから勝てていたのか」と、気づいたときにはもう遅い。  一方、折れていた四人は今日も強くなっている。  「俺のそばでだけ」動ける理由を、俺はまだ知らない。  俺はただ、荷物の重心を整えて、補給食を切らさないようにして、  全員を無事に帰したい。  それだけが、たぶん、世界最強の理由だった。
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