婚約者は愛を選び、私は理を選んだので破滅しても知りません!

ユウ

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第一章

4ぶっ飛び求婚

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何が起きたか理解できなかった。
カナリアは思考をフル回転しながらできるだけ落ち着いた口調で尋ねた。


「あの、少しお言葉が」


「エンディミオン様、それは娘を貴方様にと」

「あっ…」


完全無欠とも呼ばれているエンディミオンに呆れる。
噂とは随分と異なる一面だった。


「申し訳ない、少し話が飛んでいたようだが…実は私がこのエステリア王国に来たのは妃を探していたんです」

「「「妃?」」」

何故態々他国に来て妃を探す必要があるのか。
王族ならば政略結婚が大半だが、機会は幾度のあるはずなのに。


「その、二年前に兄のレオンハルトの結婚式以降に、令嬢達が手段を選ばずに」

「「「あー…」」」

王宮の事情に詳しい三人は心底同情した。
第三王子で、宰相をしているのでれば玉の輿で将来は安泰だった。

野心を抱く貴族からすれば、王位継承権を返上したとしても他の手を使って王座に就かせようと考えるだろう。


「兄は健在で、次男は王位に興味がない。私も…と言っても他の貴族の知った事ではない」


「まぁ、そうですね」


兄弟で骨肉の争いをしないようにと考えているのに、周りの貴族は欲望の為に利用しようとする。

「私の妻の座、もしくは侍女となり寵妃の座を狙ってかなり強引な手段を取るようになって」


「心中察し致します」


「いや、私が未熟故に」


いくら優秀でも、欲深い女は恐ろしい。
王宮でも女の醜い戦いを何度も見て来たカナリアは嫌という程知っている。


「だからこそ、私は他国にて優秀な女官を探していたんです。できれば妃なってくれそうな…カナリア嬢!」


「はい」


「どうか私のパートナーになってください」


「ええ!」


相手は王族で隣国の宰相。
いくら何でも無理があるしいきなりすぎる。


「しかしですね…」


「あまりにも急ではありませんか。何より娘が優秀だから妃に欲しいと聞こえますが」


「失礼ながら宰相の妻とは色恋では務まりません。特に女官として迎える以上は外交が出来る女性が望ましいんです。私は愛よりも理を優先する男でして…」


「お願いします!」

「早すぎるぞカナリア!」

「そうだぞ。少しは考えるべきだ!」


余りにも早い返事に絶句する二人。
対するエンディミオンは目を輝かせるのだった。


「本当ですか?私は仕事人間です」

「私も愛よりも仕事命です。何より理を重んじる方が望ましいですわ」

「ありがとうございます」

慌てる二人に対して当人は乗り気だった。



しかし――。



「いいお話ではありませんか」


王妃はこの話に一番乗り気だった事から縁談は問題なく進み。
二人の婚約は認められる事となった。




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