42 / 115
第二章
11訪問者
しおりを挟む貧の良い馬車が大通りを通り、オイシス家の邸の前に止まる。
「ここね。随分と小さなお邸です事」
「ええ、奥様。本当にこんな」
「いいわ。最後ですから」
一人の貴族夫人は侍女に命じて邸の前に馬車を止めさせる。
「あっ…あの」
邸の前で掃除をしてい侍女が戸惑う中。
「ランドルフ・オイシス様はいらっしゃるかしら?私はハッシュベル伯爵家当主です」
「えっ…」
「ご挨拶に参りましたの」
「はっ…はい!ただいま」
侍女は大慌てでその場を去って行く。
他の使用人もじろじろ見ているだけで、挨拶もしなかった。
「なんて無礼なのかしら。奥様に対して」
「所詮は下級貴族…だけど、ここまで使用人の躾もできていないなんて。まぁあの女の娘にはちょうど良いわね」
「ですが!」
「いいのよ」
未だに不満そうにする傍付きの侍女を嗜めながらしばらくして他の使用人が来て邸の応接室に通された。
その頃ランドルフ達は。
「ハッシュベル伯爵家の当主?」
「はい、ランドルフ様にご挨拶されたいと」
「うちは男爵家だ。伯爵家と付き合いはないぞ…それにハッシュベル家は大貴族だ。なのに…」
「奥様です」
「え?」
真っ青な表情をするエミリーは震えて顔を俯かせながら告げた。
「ハッシュベル伯爵家の当主は父の奥方様です」
「そうだったのか…」
「まぁなんて事なの!」
真っ青になるエミリーとは反対にその会話を聞いていたライアンが乱入して興奮する。
「きっと娘のお祝いに来たのではなくて?妾腹とは言えど、娘である事は確かだし。ランドルフに挨拶に来たのね!きっと私達とも今後お付き合いをしたいとのことだわ」
「そんなはずは…」
エミリーはありえないと思った。
ハッシュベル伯爵家ではいないものとして扱われ、母親は離れに追いやられていたのだから。
「奥様は私を良く思っていないはずです」
「表向きはそうでしょう?愛人の子供だしね」
「母上!そんな言い方を…」
「そんな事よりも早く出迎えをなさい」
ランドルフは唇を噛みしめる。
(そんな事?母上にとってはそんな事なのか)
悪気無くエミリーを侮辱している事に自覚がない。
「何をしているの!早くしなさい」
「はい…エミリー」
「私は行きたくないわ。奥様に会いたくない…」
怯えた表情のエミリーは挨拶なんかしたくないというも。
「そんな真似は許しません。オイシス家の嫁になる以上は我儘は許しません直ぐに着替えの準備をなさい」
「「「はい奥様」」」
侍女達はライアンの命令に逆らう事は出来ずエミリーの願いは簡単に却下された。
対するライアンはコネクションを失い、後ろ盾もなくした状態だったので天の助けと思い浮かれていた。
世の中そんなに甘くない事を未だに理解できずにいたのだ。
81
あなたにおすすめの小説
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。
秋月一花
恋愛
「すまないね、レディ。僕には愛しい婚約者がいるんだ。そんなに見つめられても、君とデートすることすら出来ないんだ」
「え? 私、あなたのことを見つめていませんけれど……?」
「なにを言っているんだい、さっきから熱い視線をむけていたじゃないかっ」
「あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です」
あなたの護衛を見つめていました。だって好きなのだもの。見つめるくらいは許して欲しい。恋人になりたいなんて身分違いのことを考えないから、それだけはどうか。
「……やっぱり今日も格好いいわ、ライナルト様」
うっとりと呟く私に、ライナルト様はぎょっとしたような表情を浮かべて――それから、
「――俺のことが怖くないのか?」
と話し掛けられちゃった! これはライナルト様とお話しするチャンスなのでは?
よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
〖完結〗残念ですが、お義姉様はこの侯爵家を継ぐことは出来ません。
藍川みいな
恋愛
五年間婚約していたジョゼフ様に、学園の中庭に呼び出され婚約破棄を告げられた。その隣でなぜか私に怯える義姉のバーバラの姿があった。
バーバラは私にいじめられたと嘘をつき、婚約者を奪った。
五年も婚約していたのに、私ではなく、バーバラの嘘を信じた婚約者。学園の生徒達も彼女の嘘を信じ、親友だと思っていた人にまで裏切られた。
バーバラの目的は、ワイヤット侯爵家を継ぐことのようだ。
だが、彼女には絶対に継ぐことは出来ない。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
感想の返信が出来ず、申し訳ありません。
二人の妻に愛されていたはずだった
ぽんちゃん
恋愛
傾いていた伯爵家を復興すべく尽力するジェフリーには、第一夫人のアナスタシアと第二夫人のクララ。そして、クララとの愛の結晶であるジェイクと共に幸せな日々を過ごしていた。
二人の妻に愛され、クララに似た可愛い跡継ぎに囲まれて、幸せの絶頂にいたジェフリー。
アナスタシアとの結婚記念日に会いにいくのだが、離縁が成立した書類が残されていた。
アナスタシアのことは愛しているし、もちろん彼女も自分を愛していたはずだ。
何かの間違いだと調べるうちに、真実に辿り着く。
全二十八話。
十六話あたりまで苦しい内容ですが、堪えて頂けたら幸いです(><)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる