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第三章
52歩み
しおりを挟む「自分の足で立ちなさい」
「え?」
ミリアはエミリーに対して憎しみも憐れみもなかった。
「自分の足で立って、罪を償いなさい」
全ては自分の行いで未来は変わる。
「立ち直りなさい」
「無理よ。私はもう何もない」
「勝手に決めないでくださる?」
泣きじゃくるエミリーにカナリアは冷たい視線を向ける。
「全部無くたからなんですの?このまま終わるなんて弱い精神はないでしょう?私から婚約者を寝取ってそのまま結婚までした底意地の悪さと図々しさがあるのに」
「カナリア…」
フォローになっていない。
それどころか止めを刺すような言葉だったが、その言葉に秘められたものは…
「くだらない男に頼るなんて馬鹿のする事です。これで懲りたでしょう?使えない男は不要だと」
「なっ…」
「少なくとも貴女はずる賢いわ。だったらその性悪さを使ってそこで放心している役立たずを踏み台にするぐらいしたどうなの?まぁ、今の貴女では無理でしょうね」
「…け…な」
「何です?聞こえませんわよ負け犬さん」
「ふざけるんじゃないわよ!」
泣いていたエミリーは涙を拭い、カナリアを睨みつける。
「這い上がってやるわ」
「できるのかしら?寄生虫の貴女に」
「やってやるわ。これまで散々馬鹿にされて生きて来たんだから!」
エミリーは愛人の娘として辛い思いをして来た。
けれど幸せになるべく必死で生きて来た。
「私は…私の為に這い上がってやる。こんな男必要ない」
「なっ…この性悪女」
「離婚よ!私はもう一度這い上がってやるわ。こんな男必要ない」
エミリーの瞳に絶望の色は宿っていなかった。
状況は何も変わっていなかったが、エミリーの中で何かが変わった。
かつて弱弱しかったエミリーは多くの困難により心が少し捻くれてしまった。
カナリアに焚きつけられて負けるものかと反論した。
「絶対に負けない。アンタなんかに!」
「フッ。見ものです事…男に頼らないと何もできない貴女にできるかのかしら?どうせ後で泣くのではなくて?」
不敵に微笑み見下ろしながら高笑いをするカナリアはまさしく定番の悪役令嬢のようだった。
「ホーッホッホッ!」
「カナリア、楽しんでいるな」
エンディミオンは半分は楽しんでいるだろうと確信した。
だが一方で少しだけ善意は存在した。
憎い相手ではあるが、ある意味被害者でもあるとも思っていた。
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