『夫、赤ちゃん化しました。』
『夫、赤ちゃん化しました。』
赤ちゃんの泣き声
ミルクの匂い
洗濯機は朝からずっと働いているのに
私の心はまだ片付かない。
あなたは27歳。
なのに、息を吸うたび
私を呼ぶ声が
だんだん赤ちゃんと同じ高さになっていく。
「ねぇ見て」「ねぇ聞いて」「ねぇ忘れないで」
まるで世界から
ひとりぼっちにされた子どものようで。
私は最初、笑えなかった。
怒りもあった。
泣きながら、夜の電気を消した。
だけど
あなたの拙い抱っこの腕の震えも
小さな背中を撫でながら
何度も深呼吸する姿も
私は見てしまった。
――そうか。
赤ちゃんになりたかったんじゃない。
置いていかれるのが、怖かったんだね。
私ばかり母になって
あなたはまだ、夫のまま。
追いつけなくて
迷子になっていたんだ。
ねえ。
ゆっくりでいいよ。
育つのは赤ちゃんだけじゃない。
家族って、はじめてなんだもの。
今日もミルクをこぼしながら
あなたは大げさに笑う。
その隣で
赤ちゃんが、同じ顔で笑う。
その光景に
私の胸の奥が、じんわり温かくなっていく。
大丈夫。
あなたはもう、
赤ちゃんじゃなくて
――父親になり始めてる。
そして私は、
母である前に
ちゃんと、あなたの妻でいたい。
だから、今日も言うね。
「起きて。オムツ替え当番、あなた。」
少しだけ照れながら
あなたが立ち上がるたび
家族はまた、一歩進む。
ゆっくり、ゆっくり。
3人で。
赤ちゃんの泣き声
ミルクの匂い
洗濯機は朝からずっと働いているのに
私の心はまだ片付かない。
あなたは27歳。
なのに、息を吸うたび
私を呼ぶ声が
だんだん赤ちゃんと同じ高さになっていく。
「ねぇ見て」「ねぇ聞いて」「ねぇ忘れないで」
まるで世界から
ひとりぼっちにされた子どものようで。
私は最初、笑えなかった。
怒りもあった。
泣きながら、夜の電気を消した。
だけど
あなたの拙い抱っこの腕の震えも
小さな背中を撫でながら
何度も深呼吸する姿も
私は見てしまった。
――そうか。
赤ちゃんになりたかったんじゃない。
置いていかれるのが、怖かったんだね。
私ばかり母になって
あなたはまだ、夫のまま。
追いつけなくて
迷子になっていたんだ。
ねえ。
ゆっくりでいいよ。
育つのは赤ちゃんだけじゃない。
家族って、はじめてなんだもの。
今日もミルクをこぼしながら
あなたは大げさに笑う。
その隣で
赤ちゃんが、同じ顔で笑う。
その光景に
私の胸の奥が、じんわり温かくなっていく。
大丈夫。
あなたはもう、
赤ちゃんじゃなくて
――父親になり始めてる。
そして私は、
母である前に
ちゃんと、あなたの妻でいたい。
だから、今日も言うね。
「起きて。オムツ替え当番、あなた。」
少しだけ照れながら
あなたが立ち上がるたび
家族はまた、一歩進む。
ゆっくり、ゆっくり。
3人で。
『赤ちゃん返り、再び。──でも今回はひとりじゃない』
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