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第3章 九条琢磨 6
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「絶対に嫌ですっ!」
突如、耳に飛び込んで来た女性の声に琢磨は驚いた。
(何だ?一体なにがあったんだ?だが・・何だかただ事ではない様子だったな・・?)
琢磨は胸騒ぎがして、声の聞こえた園舎へと足を向けた。
建物の影を覗き込み、琢磨は驚いた。そこには先ほどの女性が30代と思しき男性とにらみ合っていたのである。女性の背後にはレンと呼ばれた男の子が震えながら女性の足に捕まっている。
「いい加減にしろっ!レンは俺の子供だっ!早くこっちに渡せっ!」
「嫌ですっ!姉と約束したんですっ!絶対に貴方には渡さないでってっ!私はレンちゃんを託されているんですっ!」
「舞ちゃん・・・怖いよぉ・・。」
少年は必死に女性の足にしがみついている。
「レンッ!お父さんと一緒に暮らそうっ!お前を迎えに来たんだよっ!」
そして男性は少年に手を伸ばそうとした。
「何するんですかっ?!」
女性が叫んだその時・・・。
(ああ・・!もう、見ていられないっ!)
我慢出来なくなった琢磨は声を張り上げた。
「よせっ!」
するとその声に驚いたように3人が一斉にこちらを振り向いた。
「嫌がっているじゃないですか?もうその辺にして帰ったらどうです?」
琢磨はズカズカと3人に近付くと、男性の前でピタリと止まった。
「な、何だ・・・?お前は・・・。」
男性は背の高い琢磨に押されるように上ずった声で見上げてきた。その時琢磨は男からアルコールの匂いがする事に気が付いた。
「お酒を飲んでいるようですね・・?いいんですか?運動会にアルコール臭をさせてやってくるなんて・・・。それに・・。」
琢磨は女性の足元にしがみついて震えている少年を見ると言った。
「可哀そうに・・こんなに震えているじゃないですか?いくら・・父親だからと言ってもこんなに震えて嫌がっている子供を無理やり連れ去ろうとするのは・・犯罪ですよ?」
そしてジロリと男性を睨み付けた。
「うっ・・・!」
男性は悔しそうに琢磨を睨み・・次に女性を睨み付けると言った。
「おい!知ってるんだからな?舞・・・お前ただのアルバイトで生計を立てているんだろう?そんな不安定な生活で・・しかも未婚のくせに子供を育てるなんて・・・世間で通用すると思うなよ!必ず・・レンは俺が引き取るからなっ!」
男性は舞と呼んだ女性を指さすと、そのまま背を向けて歩き去って行った。
「全く・・・。」
琢磨は溜息をつくと、背後で女性が声を掛けて来た。
「あ、あの~ありがとうございました。」
「あ、いえ・・・。歩いていたら突然声がきこえてきたもので・・。」
琢磨は頭を掻きながら答える。
「この幼稚園に通ているお子さんのお父さんですか?」
「いいえ!違いますよ。学生時代の知り合いのお子さんの運動会に呼ばれてきたんです。ちょうどこれから帰るとこです。」
自分でも分からないが、何故か必死になって琢磨は否定した。
「そうでしたか・・でも本当にありがとうございました。ほら、レンちゃんもお礼を言って?」
「う、うん・・・。ありがとう・・。」
レンは頭を下げると、すぐに女性の足の後ろに隠れた。
「それじゃ、俺は帰るので。」
琢磨は軽く会釈すると、女性とレンをその場に残して帰路についた―。
突如、耳に飛び込んで来た女性の声に琢磨は驚いた。
(何だ?一体なにがあったんだ?だが・・何だかただ事ではない様子だったな・・?)
琢磨は胸騒ぎがして、声の聞こえた園舎へと足を向けた。
建物の影を覗き込み、琢磨は驚いた。そこには先ほどの女性が30代と思しき男性とにらみ合っていたのである。女性の背後にはレンと呼ばれた男の子が震えながら女性の足に捕まっている。
「いい加減にしろっ!レンは俺の子供だっ!早くこっちに渡せっ!」
「嫌ですっ!姉と約束したんですっ!絶対に貴方には渡さないでってっ!私はレンちゃんを託されているんですっ!」
「舞ちゃん・・・怖いよぉ・・。」
少年は必死に女性の足にしがみついている。
「レンッ!お父さんと一緒に暮らそうっ!お前を迎えに来たんだよっ!」
そして男性は少年に手を伸ばそうとした。
「何するんですかっ?!」
女性が叫んだその時・・・。
(ああ・・!もう、見ていられないっ!)
我慢出来なくなった琢磨は声を張り上げた。
「よせっ!」
するとその声に驚いたように3人が一斉にこちらを振り向いた。
「嫌がっているじゃないですか?もうその辺にして帰ったらどうです?」
琢磨はズカズカと3人に近付くと、男性の前でピタリと止まった。
「な、何だ・・・?お前は・・・。」
男性は背の高い琢磨に押されるように上ずった声で見上げてきた。その時琢磨は男からアルコールの匂いがする事に気が付いた。
「お酒を飲んでいるようですね・・?いいんですか?運動会にアルコール臭をさせてやってくるなんて・・・。それに・・。」
琢磨は女性の足元にしがみついて震えている少年を見ると言った。
「可哀そうに・・こんなに震えているじゃないですか?いくら・・父親だからと言ってもこんなに震えて嫌がっている子供を無理やり連れ去ろうとするのは・・犯罪ですよ?」
そしてジロリと男性を睨み付けた。
「うっ・・・!」
男性は悔しそうに琢磨を睨み・・次に女性を睨み付けると言った。
「おい!知ってるんだからな?舞・・・お前ただのアルバイトで生計を立てているんだろう?そんな不安定な生活で・・しかも未婚のくせに子供を育てるなんて・・・世間で通用すると思うなよ!必ず・・レンは俺が引き取るからなっ!」
男性は舞と呼んだ女性を指さすと、そのまま背を向けて歩き去って行った。
「全く・・・。」
琢磨は溜息をつくと、背後で女性が声を掛けて来た。
「あ、あの~ありがとうございました。」
「あ、いえ・・・。歩いていたら突然声がきこえてきたもので・・。」
琢磨は頭を掻きながら答える。
「この幼稚園に通ているお子さんのお父さんですか?」
「いいえ!違いますよ。学生時代の知り合いのお子さんの運動会に呼ばれてきたんです。ちょうどこれから帰るとこです。」
自分でも分からないが、何故か必死になって琢磨は否定した。
「そうでしたか・・でも本当にありがとうございました。ほら、レンちゃんもお礼を言って?」
「う、うん・・・。ありがとう・・。」
レンは頭を下げると、すぐに女性の足の後ろに隠れた。
「それじゃ、俺は帰るので。」
琢磨は軽く会釈すると、女性とレンをその場に残して帰路についた―。
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