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20:婚約解消からの明
しおりを挟む抜けるような青空の下。
幸せを告げる鐘が鳴っている。
今日はアムネシア伯爵家令嬢ローズと、ハープネル侯爵家子息フェデリーコの結婚式である。
花嫁のウェディングドレスの裾や襟元、ヴェールの縁には、プラチナゴールドでこれでもかと刺繍が入れられている。
「貴方色に染まりますの純白のウェディングドレスが、既に染まってるわ」
母親の呆れたような口調に、ローズも苦笑を浮かべる。
「これでもデザイナーと相談して、許容範囲に絞ってもらったのよ」
「まさかフェデリーコには銀の刺繍?」
マーガレットの言葉に、ローズは大きく首を横に振る。
「その話は蒸し返さないで!絶対にフェデリーコに言わないでよ!どうにか説得して、藤色のチーフとクラバットだけで落ち着いたんだから」
止めなかったら、全身に銀の刺繍だったのだろうか。
マーガレットは想像して笑った。
厳かな雰囲気の中で、誓い合うローズとフェデリーコ。
学園を卒業してから僅か半年での結婚である。
新郎であるフェデリーコは卒業後直ぐの結婚を希望したが、前の婚約を解消した当日に婚約をし、卒業して間も無く結婚したら、何か裏が有ると思われると、両家の両親に反対された。
「せめて婚約期間は2年だ」
「痛くも無い腹を探られたくは無い」
婚約直後から仲が良過ぎて、実はこちらも婚約前からの付き合いでは?と周りに邪推されたせいだった。
「仲が良過ぎても問題なのね」
「フェデリーコが浮かれ過ぎたのよ。自業自得!」
母親達にまで言われてしまい、フェデリーコは泣く泣く半年待った。
「二人だけの新婚生活は、いつまで出来るかしらね?」
結婚式に参列していたホッパード侯爵夫人が扇の陰で言った言葉に、隣の侯爵も苦笑いを浮かべる。
多分、新郎新婦の両親の間でも、同じ様な会話が交わされているだろう。
周りの予想通り、結婚一周年の祝いの前に、第一子誕生の祝いが行われた。
数年後には、一男二女に囲まれる二人の姿があった。
「次は?次こそ男だよね?」
第一子の長男がローズの膨らんだお腹にそっと手を当てる。
「次も女の子が良いなぁ。私も妹が欲しい」
同じように手を当てたのは、第三子の二女だ。
「私は、どっちかって言うと男の子が良いかな。可愛い妹はいるし、お姉ちゃんは無理だからね」
少し強かでしっかり者の第二子の長女も、そっとお腹に触れた。
「パパは元気で健康なら、どっちでも良いよ」
子供達の手の上から、大きな手がローズのお腹に触れる。
フェデリーコだ。
「そうね。どっちでもママは嬉しいわ」
ウフフ、と幸せに笑ったローズは、半年後にお腹の大きさに違和感を覚えた。
そして医者から双子だと告げられ、出産に向けて体力作りを頑張った。
数ヶ月後には、皆の望みを叶える男女の双子が誕生した。
元気に泣き、ミルクをよく飲み、グッスリと眠り、スクスクと健康に育った。
フェデリーコが当主になる頃には、アムネシア家は侯爵に陞爵し、ハープネル侯爵家とホッパード侯爵家との共同事業も大成功を収めていた。
「貴方と結婚出来て良かったわ、フェデリーコ」
庭で遊ぶ子供達を見ながら、ローズが微笑む。
「それはこちらの台詞だよ。愛してるよ、ローズ」
フェデリーコが隣の妻の頬へくちづけた。
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