光源氏が現在日本に~初めて恋を知った~
休日のショッピングモールは、昼を過ぎても人で溢れていた。
源(みなもと) 加代子(かよこ)、二十三歳。県警勤務。
今日は貴重な非番だった。
本当なら、ただ服を見て、少し甘いものでも買って、早めに帰るつもりだった。
けれど仕事柄なのか、休みの日でもつい周囲を見てしまう。
人の流れ、不自然な動き、困っている子ども、騒ぎになりそうな空気。
意識しないようにしても、目が勝手に拾ってしまうのだ。
「……職業病、ほんと嫌」
小さく呟きながら、加代子は肩にかけたバッグを持ち直した。
その時だった。
人混みの向こうに、妙に目を引く男が立っていた。
最初はイベント関係者か、何かの撮影かと思った。
だが、どこか違う。
長い黒髪。
艶のある雅(みやび)な装束。
見慣れない重ねの衣。
まるで歴史絵巻から抜け出してきたような姿なのに、不思議と安っぽさがない。
周囲の誰よりも浮いているはずなのに、その男の立ち姿だけはやけに堂々としていた。
しかしその目は、明らかに戸惑っていた。
天井を見上げ、光る案内板に目を細め、エスカレーターが動くたびにわずかに身を引く。
きょろきょろと落ち着きなく辺りを見回しながら、それでも気品だけは崩れない。
――変な人。
加代子は眉をひそめた。
酔っている様子はない。だが、放っておいて何かあっても困る。
声をかけようかと一歩踏み出しかけたその時、男が不意にこちらを見た。
視線が合った瞬間、男の表情が変わる。
迷っていた顔が、ふっと和らいだ。
それから吸い寄せられるように、まっすぐ加代子のほうへ歩いてくる。
嫌な予感しかしない。
加代子は反射的に背筋を伸ばいた。
男は彼女の目の前で足を止めると、しばし見つめ、やがて心から感嘆したように言った。
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意識しないようにしても、目が勝手に拾ってしまうのだ。
「……職業病、ほんと嫌」
小さく呟きながら、加代子は肩にかけたバッグを持ち直した。
その時だった。
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最初はイベント関係者か、何かの撮影かと思った。
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