黙の月 一宿痾の獅子は、名をほどく。
名を失えば、魂は崩れる。
黄泉使いの名門に生まれた少女、宗像志貴。
術も矛も扱えない彼女の右肩には、一族の未来を背負う「王の痣」が刻まれていた。
彼女は、紅の千年王。
志貴を護る宗像一心は、宗家の狼と呼ばれる最強の黄泉使い。
神を退け、悪鬼を屠り、黄泉すら踏み越える男。
けれどこの男は、志貴にだけ抗えない。
血と魂を結ぶ禁断の番契り。
それは志貴を生かすための契約であり、一心を縛る唯一の枷だった。
志貴は一心なしでは生きられず、
一心は志貴の意志に逆らえない。
守りたい。
触れさせたくない。
誰にも渡したくない。
その想いは、やがて守護と呼べる境界を越えていく。
世界の記録を覆い、人の名を消す影《Veilmaker》が動き出したとき、覆われた名に触れられるのは志貴だけだった。
「私は紅の千年王や」
守られるだけだった少女は、己の名を選び取るために前へ出る。
「お前が世界を選ぶなら、俺はお前を選ぶ」
最強が最強でいられなくなる、和風神話ダークファンタジー。
名と記憶、死と輪廻、守護と執着愛の物語。
この物語はシリアス、流血、暴力、執着愛の描写を含みます。
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