王子の溺愛癖を、私はまだ知らない。

夜の街で、私は“偽名の男”に出会った。
ぶっきらぼうなのに、どこか寂しげで。
ほんの少しの優しさに、胸が高鳴った。

──まさかその人が、冷酷と噂の第一王子だなんて知らずに。

王宮で妃候補として暮らし始めた私は、
不可解な花束、噂、嫉妬、監視……
じわりと手のひらの上に絡め取られていく。

「妃候補のくせに、夜に男に触れて……面白ぇな」

無関心だと思っていた王子は、
私のすべてに目を光らせていた。

危険な笑みの裏で、王子は誰よりも執着していて──
けれど私はまだ知らない。
あの夜出会った“優しい彼”と、
王宮で君臨する“冷酷な王子”が同一人物だということを。

そして、
彼の溺愛が一度始まったら、もう逃げられないことも──。
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