ダフネは三度、夢を見る

始まりは、父の言葉だった。

「あの二人なら、気にすることはない。なんとでもなる」

その言葉を、ダフネは母と一緒に聞いていた。

父は、女性と会っていた。装いの美しい貴婦人と向かい合って、父が談笑する声が風に乗ってここまで届いた。
 
母はそれから間もなく寝込むことが増えて、夏を迎える前に亡くなってしまう。
ダフネは涙も乾かぬうちに、王都から遠く離れた寄宿学校に入った。そして父は間もなく再婚する。

相手の女性は、あの日、父がガゼボで会っていた貴婦人だったのだろう。
すでに寄宿学校に入っていたダフネは、父の後妻になった女性とも、彼女の連れ子でダフネより一つ年下の令嬢とも、面会することはなかった。

十一歳の春の終わりに入学して、それから八年間、一度も王都に戻ることなく寄宿学校がダフネの家となる。

歳月は巡り、いよいよ卒業という頃になって、ダフネは父から文を受け取る。
 
文には、幼い頃に結ばれたダフネの婚約が解かれたことが記されていた。婚約者は、義妹となった令嬢と差し換えられたという。

ダフネには、新たな婚約が結ばれていた。相手は王国の第一王子だった。彼はダフネとの婚約を機に立太子が決まったという。

王太子の婚約者として八年ぶりに王都に戻ったダフネ。だが彼女は生家ではなく、かつての後宮、今は無人となった離れの棟に住まうこととなる。


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