追放の吟遊詩人はバックミュージックを奏でない

『見ている人は見ている――』
横笛を練習する俺の隣で、じいちゃんは目をつぶったまま――よくそう言っていた。
「いや、見てねえじゃん……、それを言うなら『聴いてる人は聴いている』でしょ?」と、じいちゃんのボケにツッコめる歳になったときには、もうそのボケも……聞けなくなっていた。

それから時は流れ。
「やっぱ、戦闘中に音楽流れてるとテンション上がるなぁぁぁ。あ、でも明日からバックミュージック要員はいらねぇから」
後方支援の吟遊詩人となった俺は、即席パーティーをその日でクビになった。
じいちゃん……俺は見てもらえてなかったし、聴いてもくれなくなかった。そして、『バフが効いて』ることにも、気づいてもらえなかったよ……。
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