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34話 ズビア視点

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 暗躍部隊が主エレナを追い詰めていなければ、ズビアはウォルフの力を借りようとはしていなかった。

 ルドロス国は大したことはないと侮った結果――エレナを危険な目に合わせている。
 ハロルドが庇ったことで助かるも……ズビアとウォルフは、ハロルドに危害を加えたルドロス国に殺意を持っていた。

 エレナが最も親しいと想っているのがハロルドで、ズビア達にとってハロルドも守るべき存在だ。

 危害を加えたルドロス国は許すことができず、ズビアは魔力による黒い刃を伸ばす。

 今まで対処できていた騎士隊と暗躍部隊は、ウォルフの攻撃を対処することで精一杯となり、魔力の刃による攻撃を受けて血を吹き出していた。

 森に悲鳴が響き渡り、騎士隊の1人がウォルフとズビアを眺めて必死に叫ぶ。

「ま、待ってくれ! 助けてくれぇっ!!」

「助ける? 君達は自分の行動を思い返してみたらどうだ?」

「ズビアの言う通りだ……許す気はない!」
 
 叫びを聞いて騎士長以外の騎士が逃げ惑うも、ズビアは逃がさず魔力の刃を伸ばすことで命を絶つ。

 今までは見逃しているも、今回は殺すと騎士長が断言したから……ズビア達は容赦をしない。

「ど、どういうことだ……ライオス様が言うには、1人が外出している時は森に1人居るはず!?」

 追い詰められた暗躍部隊の1人が、フードで顔が見えないも叫ぶ。

 その発言を最期にウォルフの爪による攻撃を受けて引き裂かれるも……数が半分以下となった合同部隊に対して、ズビアが呟く。

「なるほど……確かにこの合同部隊なら、私かウォルフのどちらかを対処できるだけの力があった。どちらか1人なら勝てていただろうね」

「ぐっっ……や、やはり貴様等、俺達の、ルドロス国の行動を把握することができているのか!?」

 騎士長が叫び、ズビアは少し驚いていた。

 1人の時を狙うと話すつもりだったのに、急にズビアとウォルフが2人で現れたからこそ、警戒するしかないのだろう。

 どうやらルドロス国側もライオスの命令に違和感を覚えていたようで、ズビアが頷く。

「正解だ。気付くのが遅すぎだね」

「クソッ……このことを報告すれば―ー次こそは……」

 そう言って騎士長が暗躍部隊を眺めて、何らかの作戦を実行しようとしている。

 何かを決意した合同部隊をを眺めて、ズビアは呆れた様子で告げる。 

「報告ね……君達は生きて帰れると、本気で思っているのかい?」

 屋敷に侵入してきた暗躍部隊の行動によって、ズビアとウォルフは容赦をする気はない。

 敵意がエレナとハロルドに向けられたのだから……その敵は完全に排除する気でいた。 
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