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第1章
第百十話 カノユール王国の王都ザイン
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カノユール王国の王都ザインとイメノア王国の王都ワースルを転移魔法陣で繋ぐとぞろぞろと王女たちが転移魔法陣から出てきて、移動が一瞬で終わるその便利さに驚いていたのも束の間街並みを見渡し一同は息をのんだ。
ルーミエは俺に抱きついて泣き始めた。生まれ育った街が壊滅している、とても辛い光景だよな……。
ルーミエを優しく抱きしめたまま箱魔法を展開し、全員で上空から街を見下ろす。ほとんどの家屋が倒壊強いている。
城を中心として城下町と言った感じで放射線状に街は広がっている。大きさはワースルよりも小さいように感じた。
ルーミエから話で聞いていた通り城の北西に位置する大きな湖は穏やかで鏡面のように反射して空を映していて、俺の理想にぴったりだったので復興開始式典はこのザインで行いたいと改めて思った。
城は焼き払われたのか、中に入るのもためらわれるほどだったがルーミエは気にもせず入っていった。みんなで手分けして城の中の確認をするように伝える。
「アキト、俺はそろそろ国に戻ろうと思うのだが…」
エソルタ島も奪還と二つの王都の状況を確認できたし、皇帝に報告することも多くあるだろう。
「それじゃあ同行しよう」
カラルにはここで活動するための拠点の準備をお願いしておいた。
出発前にカラルが杖を俺に渡す。
「これは転移杖です。これを地面に突き刺して魔力を流せば魔法陣が展開されて、いつでもわらわの傍に戻ってこれるわ」
「力が強すぎて通り抜けられなかったのは解決できたの?」
「アキト様がご自身の力を使って展開されるので問題ないよ」
この短期間にそんなものを作ってしまうとは……。カラルもなんだか底知れぬ感じになってきたな…。
「明日戻ってくるときに使ってみるよ。ありがとう」
この場をカラルに任せて俺とゾンヌフはカガモン帝国のイドンに転移魔法陣経由で戻った。異世界を通る時にはゾンヌフには強制的に目を閉じてもらう。
「レイラにも会いたいところだが、まずはどこに向かえばいい?」
「すまないな、首都メイバールへ頼む」
地図をみながらゾンヌフにナビをしてもらい、高速でかっ飛ばし十分ほどで到着する。
「うむ、やはり便利なものだな。陛下への面会まで少し時間がある、その間に俺の家で昼飯でもどうだ?」
ゾンヌフの中では皇帝陛下エルゴードに俺は会う予定になっているようだ。エソルタ島への熱意を確認するために、会えるなら会っておきたい。
「そうだな……折角来たんだから悪友の奥様方にご挨拶でもさせていただこうかな」
「わかっていると思うが、余計なことは言うなよ。紳士協定だからな!絶対に言うなよ!」と、目の笑っていない笑顔で言った。
それって前ふりじゃ無いよね?
人のいない街の外に着陸して城壁門まで歩く。ゾンヌフが門番兵に声をかけると、すぐに馬車を用意してくれた。一国の宰相だということを忘れそうになるが、やはり持っている権力は絶大だ。馬車に揺られてほどなくしてゾンヌフの屋敷に到着した。
当然のことながら屋敷の外観がとても立派だ。ゾンヌフは玄関に入り、昼の準備をするようにメイドに伝え、俺はペコリと頭を下げてゾンヌフに続いて応接室に入っていく。
しばらくすると子供たちがやってきた。
上から男の子六歳、女の子五歳、男の子三歳で俺との挨拶をすませると「父上~」といって三人ともゾンヌフに抱きつきに——と言うよりも飛びかかっていた。
聞けばイドンの仮面舞踏会の仕込みなどでの長期出張で二十数日、家に帰っていない状態だったそうだ。
続いて奥様方が現れる。一人一人丁寧にあいさつをさせてもらう。上品で美人の奥様たちだったが、こちらは子供たちとは違い、あまり関係がよくないらしいのだが、さすがに客前ではそんな雰囲気は見せない。気のせいかゾンヌフの表情が固い……。
食事中は三歳の子供の母親は世話で大変そうだったが、全員で賑やかな食卓を囲った。帰る場所がある、待っていてくれる人がいるというのは良いものだなと改めて思った。
昼食をごちそうになり、挨拶をして屋敷を出て馬車に乗り城に向かう。
「悪いがアキト、城には忍び込んできてくれないか?」と、道中気まずそうに俺に言う。
「どうして?」
「陛下はお前のことをご存じで問題ないのだが、身分を証明するものが無くて、俺の権限を持ってしても、途中の警備のチェックで引っかかる」
それもそうだ警備側からしてみれば、身体検査をしてもアイテムボックスに何を仕込んでいるか分からない相手を皇帝に合わせるわけがない。
「なるほど、いいだろう。準備ができたら部屋の中で手を上げてくれ」
「わかった」
俺は城の少し手前で馬車を下りて、歩いて城に向かう。極私的絶対王国(マイキングダム)で城全体を覆い、陛下がどこにいるか確認する。
しばらくするとゾンヌフが城内に入り、謁見の間で待っている。陛下が部屋に入り、人払いされたところでゾンヌフが手を上げる。
クロックアップ発動。
超高速で城の中に駆け込んでいく。俺が駆けた後はもしかしたら突風が吹いているかもしれないな。そんなことを思いながら、城壁をいくつかの箱魔法を踏み場にして謁見の間の窓にたどり着いた。
「失礼します」
窓から入ることにはまったく気にしていないようだ。
「おお、アキト!数日ぶりだな!」と、がっちりと握手を交わす。
「陛下もお元気そうで何よりです」
「アキト、お前は特別だ。ゾンヌフと接するように話してほしい」
「え?いいの?」
ゾンヌフの方を見る。
「人前では困るが、この3人でいるときであれば問題ない」
ご機嫌をうかがうような言葉はあまり知らないし、俺もその方が助かるかな……。
「じゃあお言葉に甘えてそうさせてもらいます」が、すぐにはできずにですます口調は治らなかった。
ルーミエは俺に抱きついて泣き始めた。生まれ育った街が壊滅している、とても辛い光景だよな……。
ルーミエを優しく抱きしめたまま箱魔法を展開し、全員で上空から街を見下ろす。ほとんどの家屋が倒壊強いている。
城を中心として城下町と言った感じで放射線状に街は広がっている。大きさはワースルよりも小さいように感じた。
ルーミエから話で聞いていた通り城の北西に位置する大きな湖は穏やかで鏡面のように反射して空を映していて、俺の理想にぴったりだったので復興開始式典はこのザインで行いたいと改めて思った。
城は焼き払われたのか、中に入るのもためらわれるほどだったがルーミエは気にもせず入っていった。みんなで手分けして城の中の確認をするように伝える。
「アキト、俺はそろそろ国に戻ろうと思うのだが…」
エソルタ島も奪還と二つの王都の状況を確認できたし、皇帝に報告することも多くあるだろう。
「それじゃあ同行しよう」
カラルにはここで活動するための拠点の準備をお願いしておいた。
出発前にカラルが杖を俺に渡す。
「これは転移杖です。これを地面に突き刺して魔力を流せば魔法陣が展開されて、いつでもわらわの傍に戻ってこれるわ」
「力が強すぎて通り抜けられなかったのは解決できたの?」
「アキト様がご自身の力を使って展開されるので問題ないよ」
この短期間にそんなものを作ってしまうとは……。カラルもなんだか底知れぬ感じになってきたな…。
「明日戻ってくるときに使ってみるよ。ありがとう」
この場をカラルに任せて俺とゾンヌフはカガモン帝国のイドンに転移魔法陣経由で戻った。異世界を通る時にはゾンヌフには強制的に目を閉じてもらう。
「レイラにも会いたいところだが、まずはどこに向かえばいい?」
「すまないな、首都メイバールへ頼む」
地図をみながらゾンヌフにナビをしてもらい、高速でかっ飛ばし十分ほどで到着する。
「うむ、やはり便利なものだな。陛下への面会まで少し時間がある、その間に俺の家で昼飯でもどうだ?」
ゾンヌフの中では皇帝陛下エルゴードに俺は会う予定になっているようだ。エソルタ島への熱意を確認するために、会えるなら会っておきたい。
「そうだな……折角来たんだから悪友の奥様方にご挨拶でもさせていただこうかな」
「わかっていると思うが、余計なことは言うなよ。紳士協定だからな!絶対に言うなよ!」と、目の笑っていない笑顔で言った。
それって前ふりじゃ無いよね?
人のいない街の外に着陸して城壁門まで歩く。ゾンヌフが門番兵に声をかけると、すぐに馬車を用意してくれた。一国の宰相だということを忘れそうになるが、やはり持っている権力は絶大だ。馬車に揺られてほどなくしてゾンヌフの屋敷に到着した。
当然のことながら屋敷の外観がとても立派だ。ゾンヌフは玄関に入り、昼の準備をするようにメイドに伝え、俺はペコリと頭を下げてゾンヌフに続いて応接室に入っていく。
しばらくすると子供たちがやってきた。
上から男の子六歳、女の子五歳、男の子三歳で俺との挨拶をすませると「父上~」といって三人ともゾンヌフに抱きつきに——と言うよりも飛びかかっていた。
聞けばイドンの仮面舞踏会の仕込みなどでの長期出張で二十数日、家に帰っていない状態だったそうだ。
続いて奥様方が現れる。一人一人丁寧にあいさつをさせてもらう。上品で美人の奥様たちだったが、こちらは子供たちとは違い、あまり関係がよくないらしいのだが、さすがに客前ではそんな雰囲気は見せない。気のせいかゾンヌフの表情が固い……。
食事中は三歳の子供の母親は世話で大変そうだったが、全員で賑やかな食卓を囲った。帰る場所がある、待っていてくれる人がいるというのは良いものだなと改めて思った。
昼食をごちそうになり、挨拶をして屋敷を出て馬車に乗り城に向かう。
「悪いがアキト、城には忍び込んできてくれないか?」と、道中気まずそうに俺に言う。
「どうして?」
「陛下はお前のことをご存じで問題ないのだが、身分を証明するものが無くて、俺の権限を持ってしても、途中の警備のチェックで引っかかる」
それもそうだ警備側からしてみれば、身体検査をしてもアイテムボックスに何を仕込んでいるか分からない相手を皇帝に合わせるわけがない。
「なるほど、いいだろう。準備ができたら部屋の中で手を上げてくれ」
「わかった」
俺は城の少し手前で馬車を下りて、歩いて城に向かう。極私的絶対王国(マイキングダム)で城全体を覆い、陛下がどこにいるか確認する。
しばらくするとゾンヌフが城内に入り、謁見の間で待っている。陛下が部屋に入り、人払いされたところでゾンヌフが手を上げる。
クロックアップ発動。
超高速で城の中に駆け込んでいく。俺が駆けた後はもしかしたら突風が吹いているかもしれないな。そんなことを思いながら、城壁をいくつかの箱魔法を踏み場にして謁見の間の窓にたどり着いた。
「失礼します」
窓から入ることにはまったく気にしていないようだ。
「おお、アキト!数日ぶりだな!」と、がっちりと握手を交わす。
「陛下もお元気そうで何よりです」
「アキト、お前は特別だ。ゾンヌフと接するように話してほしい」
「え?いいの?」
ゾンヌフの方を見る。
「人前では困るが、この3人でいるときであれば問題ない」
ご機嫌をうかがうような言葉はあまり知らないし、俺もその方が助かるかな……。
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