猫を噛む
いじめ、無関心、不条理、私欲、自殺、死。
現代社会ではたったひとりの人間の死など取るに足らない事象だ。
そう嘆いている男がいた。血塗れのよれたスーツを着て、どこにも繋がっていないマイクを握って。暗い場所でひとり、声高に訴え続けていた。
お前らはこれでいいのか。このまま、あいつらに殺されたまま消えてしまっていいのか。
俺みたいな哀れな人間は、もう増えなくていい。
---自殺なんて、もう誰もしなくていい。
「俺たちで、苦しみを知っている俺たちで、なくす」
その言葉ひとつで、作り上げられた機関。
現世と常闇の間に存在する、死者が生きられる機関。
天国と呼ぶにはいささか現実的で、賑やかすぎる場所。
「自殺者の発見、監視、救助」を掲げるその機関は世界中に置かれることとなり、日本では「前哨」と呼ばれることとなった。
前哨の目が今日もまたひとり、自ら命を投げ出そうとする人間を見つける。
この物語はフィクションです。
実際の人物、団体、宗教などとは関係ありません。
現代社会ではたったひとりの人間の死など取るに足らない事象だ。
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