閒冥草祇(まくらのそうし) ~月穹の四将の物語~

 宇治の川辺のこの庵をお訪ねくださり、誠に御足労でございます。
 私が庵主の尼でございます。
 
 私の説く物語が、都で評判になっていると聞き、驚いております。
 物語を聞きに来てくださる皆さまのお陰で、賑やかな日々が戻って参りました。

 ささやかなもてなしとして、麦茶と干し柿を御用意いたしました。
 どうぞ、お召し上がりください。

 

 ……では、かの物語をお話しいたしましょう。

 それは、遥かな異郷の物語。
 時の堰を超え、黄泉の川を遡った月の国の物語でございます。
 
 心広き王帝さまが治めるその国は、長き平和が続いていました。
 されど、神逅椰(かぐや)と名乗る悪しき宰相の禍々しき力により、公卿たちは謀反の濡れ衣を着せられ、多くの血が流れました。
 木は枯れ、魚たちは川から姿を消しました。

 宰相に立ち向かった若き剣士たちも命を奪われ、亡骸は黄泉の泉の底に沈められました。
 されど、その御魂は朽ちることなく、遥か彼方の黄泉の対岸へと流されて行ったのです……。

 

 そうして、三千世の時が流れました。
 
 御齢が十五の少年は、その国で穏やかに暮らしておりました。
 父を早くに亡くし、占術を生業とする母と仲良く暮らしておりました。
 隣に住まう少女に恋をし、雪の降るその朝も、一緒に学舎に向かいました。

 宰相の魔手が、ひそやかに忍び寄っているとも知らず……。
 


 これは、闇を打ち払う物語――。
 シナヅキの王に挑んだ、四人の勇士たちの物語――。
 勇士たちと思いを共にした、気高き人々の物語――。

 それを、我『果てなる者』が語ろう。
 我が、次なる『世』に去る前に。
 
 友よ。
 輪廻と祈りの物語を、勇士たちの崇高なる闘いを伝えよう……。



  *



 『カクヨム』でも連載中です。
 そちらの加筆修正版となります。
24h.ポイント 214pt
55
小説 6,485 位 / 221,730件 ファンタジー 1,275 位 / 51,485件

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