棕櫚と霜 ~細川ガラシャと二重の女忍~

軒猿、又の名を越後夜盗組。
其の女忍衆が一人、棕櫚。

景勝様への忠義を尽くし、聞者役として細川家に潜伏している。
謀反人の娘・細川珠──秀林院様の侍女として。

織田勢の猛攻は信長暗殺によって絶たれ、上杉家は滅亡を免れた。
その気はなくとも、謂わば恩人(景勝様)の恩人(明智)、の愛娘。

しかし時は戦国、世は乱世。昨日の情今日の仇。
上杉家と同じ五大老ながら、徳川家康が会津征伐の狼煙を上げた。
忠興様は家康に従い、上杉征伐に出陣。

「秀林院様は仇の妻となりました。我らも務めを果たす時です」

先達の聞者役・霜が暗殺を仄めかす。
時を同じくして豊臣家家臣・石田三成の使者が訪れた。
秀林院様を人質とするために。

「我が夫が命じた通り、此処で武将の妻として死にます」

そう、秀林院様は言った。

「そなた達は逃げなさい。なんとしても落ち延びるのです」

私には生きろと、言った。
夫が征伐に向かった上杉軍の女忍である私に、生きろと。

「でうす様は自害を固く禁じておりますゆえ、介錯を」

家老・小笠原少斎の刃が、秀林院様の胸めがけて閃く。
その時、私は……────

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○主人公が歴史改変ポイントです。尚、わかりやすい現代口調を用います。
(他「エブリスタ」様に投稿)
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