「婚約を解消して彼女に求婚する。いつものように手紙は君が書いてくれ」と婚約者に言われました。では、ご自分でどうぞ
子爵令嬢アメリアは、婚約者ローレンスの手紙を代筆してきた。
礼状も、招待状も――そして、彼が公爵令嬢セレスティアへ送る恋文も。
家のために必要な婚約だった。愛される妻にはなれなくても、役に立つ妻にならなれる。そう自分に言い聞かせ、気づけば恋文は百通になっていた。
けれど百通目を書き終えた夜、ローレンスは新しい白紙を差し出す。
「君との婚約を解消したら、セレスティアに正式に求婚する。その手紙を書いてくれ。彼女が喜ぶ言葉は、俺より君のほうが分かるだろう?」
婚約を解消したあとも仕事なら用意してやる。公爵家と縁ができれば、アメリアの家の面倒も見てやれる。
そう語る彼を前に、アメリアは初めて代筆を拒んだ。
そして、その白紙に別の手紙を書く。
これまで届いた百通の恋文を、すべて持ってきてほしい――と。
百一通目だけは、ローレンスではなく「アメリア・ノーウッド」の名前で。
一方、初めて自分の名で書いた原稿を出版商へ持ち込んだアメリアは、その文章を「あなたのもの」として読んでくれる編集者ユージンと出会う。
そして百通の恋文を大切に保管していたセレスティアもまた、そこに綴られた言葉を覚えていた。
「これは、あなたの文章ではありません」
十通ずつ束ねられた十束の恋文を前に、百通の言葉が本当は誰のものだったのかが明らかになっていく。
他人の名前のために言葉を使い続けてきた令嬢が、百一通目から、自分の名前で仕事も未来も恋も選び直す物語。
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