僕の記憶が消えるたび、君は「はじめまして」と泣いた。

 若年性認知症を患い、日々失われていく記憶をボイスレコーダーに繋ぎ止める青年・燈(あかり)。そして、喉に深い傷跡を持ち、言葉を失った謎の少女・凪(なぎ)。海沿いの静かな街で出会った二人は、燈の「記録係」として共に過ごし、消えゆく日常を懸命に書き留めていく。

 しかし、二人の穏やかな時間は、やがて不可解な違和感に侵食されていく。
 燈が特定の潮騒を聴くたびに起こる、裂けるような耳鳴り。凪がスケッチブックの「1ページ目」を頑なに隠し続ける理由。そして、燈の忘却を加速させる「ある条件」とは……。

 首にかけた動かない時計、青いリボンのレコーダー、そして一番星に託された祈り。
 街の老人が残した「お前はあの時の……」という不穏な言葉が、燈の記憶の余白に潜む「10年前の影」を呼び覚ましていく。

 「たとえすべてを忘れても、この痛みだけは私のものでいさせて」

 失われる記憶と、刻まれる傷跡。
 二人が交わした「約束」の正体とは何なのか。
 すべてが繋がるとき、物語は切なくも衝撃的な光に包まれる。

 喪失を抱えた二人が紡ぐ、美しくも残酷な純愛ミステリー。
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