【完結】終電に消える、泡沫の君


 過去の失敗や後悔に苦しみ、「忘れたい」と強く願う悠人(ゆうと)は、残業帰りの終電間際のホームで、謎めいた女性、雫(しずく)に出会う。

 彼女は終電のベルとともに光の粒となって消え、翌朝、記憶を失った状態でまた別の場所に現れる「泡沫の存在」だった。

 悠人は、彼女が人々の「忘れたい記憶」を糧に存在していることに気づき、特に彼女が自分自身の「忘れたい過去の恋」の影であることを悟る。

 彼女を存在させ続けるには、彼が毎日彼女に恋をし、そして終電が来るたびに彼女を忘れようとし続けるという、切ない矛盾を抱えなければならない。

 しかし、雫の体が日に日に早く透明になっていくのを見て、悠人は苦渋の決断をする。

 この決断は、雫の存在理由を否定するものだったが……。

 彼女が消滅の直前に口にした言葉。

 それが悠人の心に、ひとつの愛を残した。
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