茨姫小説一覧

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「呪われしヴァンスの娘め! お前のような忌むべき存在は、我が家の、いや、このエルドリア王国の永遠の汚点だ!」
実の父亡き後、邪悪な義母と美貌の義姉セラフィーナによって虐げられ、ついには「呪われた花嫁」という偽りの烙印を押され、社交界から追放された公爵令嬢エララ・ヴァンス。かつて『エルドリア王国の至宝』とまで讃えられた彼女の輝きは、今は見る影もない。王都を遠く離れた、陽の光さえ拒むかのような辺境の荒れ屋敷。そこでエララは、飢えと寒さ、そして何よりも深い孤独と絶望に喘ぐ、筆舌に尽くしがたい不遇の日々を送っていた。彼女の心をかろうじて繋ぎとめていたのは、荒れ果てた庭の一隅で、血の滲むような思いで密やかに育てる美しい花々と、数年前の夜会でただ一度だけ、優しい言葉を交わした実直なる騎士、アラリック・ソーンへの淡く、しかし消えることのない切ない憧憬の念だけだった。
そんなエララの、まるで止まっていたかのような運命の歯車が、ある激しい嵐の夜、劇的に、そして激しく動き出す。公務の途中で道に迷い、雨露をしのぐためエララの荒れ屋敷に一夜の宿を求めて現れたのは、奇しくも、彼女が胸の奥で焦がれ続けたあの騎士、アラリックその人だったのだ!みすぼらしい自身の姿を恥じ、汚れた屋敷を見られることを恐れ、必死で彼を拒もうとするエララ。しかし、アラリックは巷に流れる悪質な噂や、彼女の痛々しい外聞に一切惑わされることなく、エララの瞳の奥深くに宿る、決して汚されることのない気高い魂の輝きと、その奥に隠された、あまりにも深い悲しみと苦悩を見抜く。そして、エララの純粋無垢な心と、逆境にあっても失われることのない健気さ、そして何よりも彼女自身の魅力に触れるうち、彼は抗うことのできない激しい力で、どうしようもなく強く、深く惹かれていくのだった。
「私が必ず、君をこの茨の檻から救い出してみせる。君のその美しい微笑みを、永遠に曇らせるもの全てを、この剣にかけて排除しよう」
だが、二人の密やかで清らかな逢瀬を知った義姉セラフィーナが、嫉妬と憎悪の炎に身を焦がし、さらなる非情で悪辣な罠を仕掛ける!エララを永遠に社会の闇から葬り去り、アラリックとの純粋な絆を無慈悲に引き裂こうとする、悪魔のような義姉の魔の手が、刻一刻と迫る。果たしてアラリックは、その身命を賭して愛するエララを守り抜き、その燃えるような激しい愛情で、彼女の凍てついた心を、身も心も蕩かすことができるのか? そして、長年虐げられてきたエララは、積年の深い恨みを晴らし、全ての元凶である義姉に、正義と怒りの鉄槌を容赦なく下すことができるのか!?
文字数 14,795
最終更新日 2025.06.01
登録日 2025.06.01
茨に囲まれた城がある。
ひっそりと佇む、かつての白亜の城は深い呪いが掛かっていた―――。
百年の眠り。
城には使用人や王やお后、そして王女ミア。
その全てが時を止められ眠りに落ちていた。
恐ろしい魔女、アメリアの呪いである。
王女に嫉妬した魔女は、城ごと呪いを掛けたのだ。
呪いを解くには『王子様のキス』……それだけである。
そんな呪われた城に一人の青年。
魔法使い、ノア。
自らも掛けられた呪いの影響で歳を取らず、ずっとこの城で眠り続ける者達の世話を一人でしてきたのだ。
―――いばら姫と魔女と魔法使い、そして王子。
彼らの時計が、百年の時を超えて動き出す。
文字数 6,229
最終更新日 2019.12.30
登録日 2019.12.30
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