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王太子殿下の解毒薬を作る薬草園を、妹の婚約披露のため潰せと父に命じられましたが、私はもう従いません
「お姉様も、もう泥遊びは終わりにできるわね」
妹の婚約披露のため、明朝から薬草園を掘り返す。父はそう正式に命じた。
そこは、王太子殿下の解毒薬を作れる、たった一つの薬草園だ。
伯爵令嬢リディアは、亡き母から受け継いだ銀星草を育てる薬用区画主任。完成薬は十二本。今ある危険には備えられても、園を失えば、次の一本は作れない。
「必要になれば、お前が別の場所でまた育てればよい」
「だって、それがお姉様の仕事ですもの」
壊すのは自分たち。直すのは姉。父と妹は、当然のようにそう考えていた。
けれど、もう埋め合わせるつもりはない。
リディアは完成薬十二本を施療院へ移し、種と挿し穂を避難させ、夜明け前に始まった掘り返しを、薬用区画主任の権限で正面から止める。
「ここは母が作った園です。そして今は、未来の患者の園です。どちらも、あなたの披露の飾りにはしない」
黒く変色した根を前に、王太子殿下が現場へ立った。妹の言葉は、書記官の手でそのまま記録される。
父は総監の職を失い、妹は望んだ舞台のすべてを失った。
そして殿下が問う。「園を残せば、それでよいか」
「いいえ」
リディアが求めたのは、園の存続だけではない。母と自分の名を功績として記録に刻むこと。そして、誰か一人の一存では二度と潰せない仕組みを、自分の手で作ること。
危機対応を一人で抱えてきた王太子付き侍医テオドールと、働き方も、その先の関係も、自分たちで選び直していく。
全7話・完結。ざまぁと職業的名誉回復、そして相互尊重のハッピーエンドです。
文字数 14,708
最終更新日 2026.07.31
登録日 2026.07.31
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