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高利貸しに家を潰されましたが、うちの猫は嘘の匂いがわかります
わたくし、フロランス・メルシエ。元・男爵令嬢で、いまは王都の下町、錫通りの小さな質屋の店主ですわ。
三年前、父が急逝した晩に現れた高利貸しのガスパールが、見たこともない借金証文を振りかざして、屋敷も家財も爵位も、ぜんぶ持っていきましたの。残ったのは、祖母の遺したこの店ひとつ。
けれど、うちには番頭がおりますのよ。いつの間にか帳場に居着いた、太った黒猫のグリム。この子、贋物にだけ「ふしゃー」と唸りますの。質草の宝石も、書き付けの署名も、そして――人間の嘘も。
「あの猫が唸らなければ本物」。それが下町の合言葉になった頃、店を潰しに来た高利貸しと、伯爵家の形見のすり替え事件と、三年前のあの証文が、一本の糸でつながりまして。
紙の嘘を見抜くのがお仕事の、まっすぐな公証人オーレリアン様いわく、「紙は嘘を書けます。けれど、書いた手の癖までは隠せません」。
あら、それならうちの子のほうが早うございますわ。だって贋物は、匂いますのよ。――物も、人もね。
もふもふ大増量、令嬢口調の下町スカッと譚、全八話。
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文字数 7,740
最終更新日 2026.09.07
登録日 2026.09.05
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