蝉の声 小説一覧

1件
1

夏が終わる前に、私は歌う

この物語は、名も形も持たない蝉として始まった。 ただ、体の奥に残る熱だけが確かだった。 飛ぶことでも、耐えることでもなく、 沈黙が訪れる前に歌うこと。 たとえ一夏だけでも、 強く存在すること。 街は止まらない。 時間は戻らない。 それでも、誰かがその声に気づいたなら、 それは、夏の中で生きていた。
1件