前歯の階段 ~小説家を目指す十七歳のぼくと、夢を叶えた二十八歳さんと、夢に敗れた三十九歳さんと、~
9月半ばだというのに、気温が三十五度を超える猛暑の日。
物語は、ぼくが近鉄名古屋線の下りの急行に乗り、弥富駅のホームに降り立つところから始まる。
ぼくは、十七歳で、高校二年生。
本名は作中では明らかにならない。
他の登場人物(「三十九歳さん」や「二十八歳さん」)からは「十七歳くん」と呼ばれる。読書が趣味。将来の夢は小説家。拙いながらも小説を書いている。
学校では、騒がしい同級生たちを疎ましく思い、小馬鹿にしてもいる。
嫌いな言葉は、クラスメイトからかけられる「何の本を読んでるの?」。嫌いな理由は、相手はどうせその本を知らないから。
高校を午前中で早退したぼくは、弥富駅南口のそばにあるバス停の時刻表を見て、バスが出たばかりだと知る。次のバスが来るのは一時間後。
友人である「三十九歳さん」の家までは徒歩一時間弱なので、歩いて向かうことにする。
ぼくは、「三十九歳さん」の名前を知らないし、「三十九歳さん」もぼくの名前を知らない。
「三十九歳さん」の家に着くと、「二十八歳さん」という人が出迎えてくれる。「二十八歳さん」は、いつも「三十九歳さん」の家に遊びにきている。性格は楽観的でお調子者だが、実は自尊心と自己顕示欲とコンプレックスの塊。
「二十八歳さん」は、昨年、青年漫画雑誌の新人賞で佳作を取り、受賞作でデビューしている。デビューをきっかけに契約社員として働いていた仕事をやめたが、デビュー後は新作を発表できていないが、そのうちどうにかなるだろうとのんきなに考えている。
「三十九歳さん」は田舎の百坪の一軒家で、70歳の母親とふたりで暮らしている元漫画原作者で、漫画原作の新人賞を三度取ったことがある人だ。
そのうちの二作は漫画化され雑誌に掲載され、残りの一作は漫画化されてWeb連載された。
だが、一冊だけ単行本を出したが鳴かず飛ばずで、その後はどの出版社の編集者からも見捨てられ、現在はネットで細々と小説を書いて発表している。編集者からあれこれ言われて、作品の方向性やテーマを変えられるくらいなら、書きたいものを書いて、それが誰か一人の心に響けばいいと考えている。
「二十八歳さん」は、そんな「三十九歳さん」を、内心では負け組だと思っている。
「三十九歳さん」は、それを見透かした上で「二十八歳さん」は将来自分のようになると考えている、
小説家になりたいぼくは、小説家にはなれなかったが漫画家になった「二十八歳さん」のことも、漫画原作者になってもうまくいかなかった「三十九歳さん」のことも、尊敬はしながらも、内心はこうはなりたくないなとかんがえている。
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学校では、騒がしい同級生たちを疎ましく思い、小馬鹿にしてもいる。
嫌いな言葉は、クラスメイトからかけられる「何の本を読んでるの?」。嫌いな理由は、相手はどうせその本を知らないから。
高校を午前中で早退したぼくは、弥富駅南口のそばにあるバス停の時刻表を見て、バスが出たばかりだと知る。次のバスが来るのは一時間後。
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ぼくは、「三十九歳さん」の名前を知らないし、「三十九歳さん」もぼくの名前を知らない。
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だが、一冊だけ単行本を出したが鳴かず飛ばずで、その後はどの出版社の編集者からも見捨てられ、現在はネットで細々と小説を書いて発表している。編集者からあれこれ言われて、作品の方向性やテーマを変えられるくらいなら、書きたいものを書いて、それが誰か一人の心に響けばいいと考えている。
「二十八歳さん」は、そんな「三十九歳さん」を、内心では負け組だと思っている。
「三十九歳さん」は、それを見透かした上で「二十八歳さん」は将来自分のようになると考えている、
小説家になりたいぼくは、小説家にはなれなかったが漫画家になった「二十八歳さん」のことも、漫画原作者になってもうまくいかなかった「三十九歳さん」のことも、尊敬はしながらも、内心はこうはなりたくないなとかんがえている。
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