不治のユラ~ゆるふわ殺し屋お姉さんとの逃避行~
ぼくは、自分の歳も本当の名前も知らない。
幼い頃に家族を失い、拾われた組織で殺し屋として育てられた。隠密魔術を使って人を殺す。仕事を終えた日には、決まって町の花屋に立ち寄る。
そこには、ぼくを「ぼくくん」と呼ぶ、ゆるふわなお姉さんがいる。名前も知らない彼女と花の世話をする時間だけは、何も考えずにいられた。
ある朝、花屋に一人の男が現れる。男が狙っていたのは、ぼくではなくお姉さんだった。
「不治のユラ」
そう呼ばれたお姉さんは、いつもの調子でぽやぽやと笑う。だが、男の魔術が彼女と店の壁を吹き飛ばしたとき、ぼくが知っていた日常は終わった。
殺されたはずのお姉さんは、燃える花屋の中で立っていた。
「ぼくくん、逃げよっか」
ぼくが帰る場所だと思っていた人は、かつて逃亡した最強のエージェントだった。
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