元の世界には戻れない?戻れますけど。

 グランズデール皇国に《聖女》が召喚された。
 皇国は300年ぶりに召喚の儀を行い、聖女を異界から召喚する事に成功したのだ。

 召喚されたのは、12才の幼き少女。
 就寝中にいきなり身体が熱くなり、熱が引いたと思ったら異世界に居たという。
元の世界に帰して!少女は泣き喚き、盛大に嘆いた。


召喚の儀を執り行ったこの国の皇弟であり魔法術騎士団総長は憐みの表情をしてーーーー

「異界渡りは召喚は出来ても、戻す方法はないのです。最上位の聖女として、何不自由なく慈しみますから、皇国を救ってください」

と、大きな不安に体を震わせる少女に語った。


 少女は泣き顔を伏せ蹲り、表情を見せない様にして動かなくなった。

 伏せた顔の本当の表情はーーーーー


『残念でした!いつでも帰れますけど?』

悪い顔をして嘲笑う。
何も知らない、知ろうとすらしない人たち。
好きの反対は無関心だというけれど、私はこの人たちから無関心な存在だったのかもしれない。

もう二度と心を開いたりしない。



 実はこの召喚の儀によってこの場所へ現れるのは、少女は二度目である。

 一度目は思い出したくもない惨めな結末だった。
 全てを失い連れて来られた知らない世界で、生涯笑う事などないだろうと嘆いた世界で、やがて自分の全てで支えたいと愛した人の裏切りを知り、自害したのだ。


神は見ていた。
少女の激しい苦悩の痛みを天界からずっと。
その可哀そうな魂を救い上げ癒し、また少女の望む逆行させた時の中に送り出した。
神は、少女の憂さ晴らしのついでに、捩れた世界の調整を頼んだ。 


――――今度は間違えない。

 全てを失ったあの時のように泣いたりはしない。
心許す事も、愛すこともない。
 異世界と現世を行ったり来たりして何も失うことなく、今度は熨しをつけてくれてやるのだ。


ーーー違う国が召喚した聖女もどきに、あの人なんてくれてやるわ。

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