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4章 コスで救済

71話 投降推奨

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「誰ですかな?」


誰にも言わず分身たちと敵である領主のいる街に着いた僕は、館の前で睨まれ待たされてます、門を開けてくれないんだ、僕がリュウだと言うと渋々開けてくれました。
そっちが呼んだくせにっと、怒って屋敷の中に入ると豪華な玄関が広がっていました。
それはもう凄く豪華でしたよ、貴族の人達はそれを誇示して見栄を張ってるんだ、それを見て嫌な気持ちのまま応接室に向かう羽目になったけど、僕はもっと嫌な気分です。


「来たなクズモグラ」


誰とも話さず前髪で顔を隠してた、高校時代の僕のあだ名を呼ばれたからだね、誰かに声を掛けられると縮こまってた、蹴られても殴られても喋らないで身を守るだけだったんだ。
心も身体も痛かった、逃げても追いかけられる、その場に丸まっていれば、多少蹴られても痛くない、こいつはそれを見て笑っていた奴です。


「何とか言えよモグラ」


黒田の問いに僕は答えない、怖くて喋れないわけでも拒絶したいからでもないです、黒田は怒って睨んでくるけど僕はもう怯えません、こんな奴をどうして怖がっていたんだろう?その変化に自分で驚いてるんだ。
こいつは孤児院に悪い事をする、それを思うとこいつが睨んできても平気なんだ、むしろやる気が出て来るよ。


「おい聞いてんのかよ!」

「ああはいはい、聞いてますよ」


こいつの話なんて聞く気はありません、ここに来たのは忠告の為なんだ、だけどこいつはペラペラ喋ってる、ここに来て戦う生活は楽しいとか言ってる。
僕には関係ないので、これからの準備を始めます、人形とぬいぐるみを出して分身たちと笑います。


「な、何を笑ってるんだ、きもいなモグラ」

「君の言動に笑ってるんだよ、いい歳してモグラとかどうかしてるよ」


分身と人形たちがクスクス笑い始めます、これは僕が高校生の時、彼らに教室でやられた事です。
黒田はそれを見てイラっとした顔を見せたよ、最初の1手はこれで良いですね。


「笑ってんじゃねぇぞザコども、モグラ止めさせろ!」

「どうして僕がそんな事をしないといけないんだよ、みんなは可笑しいから笑ってるんだ」


笑ってるみんなと一緒に変な事を言ってると笑います、黒田は更にイライラを増してきました、それを見て僕たちは笑います、黒田は遂にテーブルを壊す程になったよ。
物に当たるなんて馬鹿だねっと、口に出して笑ってやったよ、黒田は笑うなと立ち上がり僕の胸ぐらを掴んできました。


「何を怒ってるんだよ、今僕たちがやってるのは、昔君がやってた事だよ、分からないの?」

「な、何を言ってやがる」

「僕はね、投降しに来たわけじゃない、忠告に来たんだ、宣戦布告を取り消しなよ黒田、じゃないと後悔することになる」


掴まれたままで警告します、こいつはするわけないと言い返してきました、今は何もしてないから分かってない、だから分身と人形たちに笑ってもらいました。


「それなら嫌がらせを続けるまでだよ、四六時中人形は見ている、ぬいぐるみは笑って来るんだ、壊しても代わりは現れ、君が逃げようともずっと追いかけて来るよ」


僕にはその力がある、それにあの時の恨みは忘れないよ。
黒田は、戦争になっても良いのかと言ってきます、僕はそれを聞いて鼻で笑ったよ、やれる物ならやってみろってね。


「良い度胸だなモグラ」

「それはこっちのセリフだよ黒田、僕の力が嫌がらせだけで済むわけないでしょ、戦争を始めるって言うなら、嫌がらせ以上になる」

「ふんっ!それなら今から戦争開始だ、思い知らせてやるよ」


今この瞬間から戦争開始だと、部屋の中に兵士が入って来ました、僕たちを帰さないって訳です。
30人の兵士が取り囲み、黒田は余裕の表情です。


「お前を飼ってやる、昔の様に虐めてやるよ」


楽しみだぜ!とか黒田は嫌な笑みを浮かべます、僕はそれを聞いて呆れました、その笑いは嫌がらせではなく、ほんとに可笑しかったんだよ、山から帰って来て久しぶりに心の底から笑いましたね。


「な、何がそんなにおかしい」

「笑わずにはいられないよ黒田、兵士を沢山集め、昔みたいに群れてるから強いと思ってる君みたからね」


集まらなければ何も出来ない、ほんとに変わらない、兵士30人が剣と槍を持って構えてるけど、それは人形たちによって取り押さえられました。
数がいても今の僕には勝てない、人ではなく人形とぬいぐるみに負けたんだ、それは実力差を見せるのに十分です、バカでも分かるよね。


「どうかな、これでもまだやるのかな?」

「と、当然だぜ!こいつらは弱いかもしれねぇ、だが俺は強い」


黒田は収納スキルから剣を出し僕に向けてきました、他にも戦闘スキルが沢山あってすごく強いと言ってきます。
山での魔法を思い出し、僕はニヤつきます、黒田は剣に雷の力を纏わせ、何がおかしいとか言ってきたね。
あの時、僕は逃げたからわからないでもない、だけど雷の威力が怖かった訳じゃないんだ、あんな威力の魔法なんて怖くないよ。


「だから君はバカなんだよ、一人で出来る事には限界がある・・・それに君、そんなに強くないよ」


剣の先を指で挟める間合いまで僕は一瞬で詰めました、雷は僕に流れて来るけど、何事もない様にみせたんだ。
黒田は反応出来ずびっくりしてます、片手で剣を押し、僕に突き刺そうとしてるけど、指2本の僕に負け押し返せません、両手に持ち替えても勝てなくて表情が変わります。
君は弱い、これで分かったでしょっと、にこりと笑って見せます、黒田は諦めず右手を僕の顔に向けました、至近距離での火魔法を使おうとしてるんです、僕も右手を出し魔法を打ち消したんだ。


「な!?」

「何を驚いているんだよ黒田、これくらいは出来て当たり前だよ」


魔法を打ち消す為には、魔力を散らせばいいと学園で習ったんだ、いくら多くの魔力を集めても簡単に対処できる。
何度も魔法を使おうとしてるのに発動もしなくて、黒田は息を切らせ始めたよ。


「て、てめぇ~」

「1人の力なんてどうとでもなるんだよ黒田、君の考えは甘すぎる、僕たちは帰るけど宣言は解除するんだよ」


窓から僕と分身は飛び出しました、人形とぬいぐるみはそのままです、僕たちが出てしばらくして兵士たちの拘束を解いたけど、相手は止める事はないようです、屋敷から黒田の叫び声が響いていました。
これで分かれば楽なんだけど、そう思いつつ仕返しはまだまだ出来るとウキウキです、分身の松に性格悪いと言われちゃったよ。
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