影を継ぐ双貌の王子
辺境の小さな村で、病弱な母を支えながら静かに暮らす少年レオン。彼には魔法の才能がない。十歳の魔力測定で水晶玉は沈黙したまま光らず、「魔力ゼロ」の烙印を押された過去を持つ。それでも彼は腐らなかった。薬草を摘み、畑を耕し、母の薬を届ける日々の中に、自分なりの居場所を見つけていた。
そんなレオンを支えてきたのが、幼馴染のカイとエマだ。カイは王都の騎士見習いとして鍛え上げられた快活な少年。エマは魔導学院で風の魔法を操る聡明な少女。二年ぶりに村へ帰ってきた二人は、変わらぬ明るさでレオンを迎える。母を囲んだ温かな食卓には笑い声が絶えない。
しかし、再会の喜びの裏で、不穏な影が忍び寄っていた。王都では王子暗殺の噂が飛び交い、「影の部隊」と呼ばれる正体不明の暗殺集団が暗躍しているという。カイとエマの目の下には隈が刻まれ、二人はレオンに「伝えなければならないこと」があると言いかけては口をつぐむ。
そして夜、星空を見上げるレオンを、森の奥から銀の仮面の人影が静かに見つめていた。「対象、確認」——その言葉が意味するものを、まだ誰も知らない。
魔法なき少年の平穏な日常が、静かに、しかし確実に終わりを告げようとしている。母を守ることだけを生きる理由にしてきたレオンは、やがて自分自身の存在に隠された秘密と向き合うことになるのか。幼馴染の絆、辺境の知恵、そして迫りくる闇——すべてが交差する物語の幕が、今ここに上がる。
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