最初で最後のサヨナラを。

 「お父さん。――貴方は幸せでしたか?」

 父が亡くなって、一年が経つ。
 一周忌を迎えた翌日、私、茅美代(ちがやみよ)は、父、乙瀬昭夫(おつせあきお)を名乗る男性に声をかけられた。

 見た目は驚くほど生前の父に似て――父そのもの――であり、それでもあまりの怪しさに一度は突き放すも、次から次へと出てくる父しか知らないような話に、信じ始める私。

 事故に遭いかけた男性を助けようとした幽霊の父は、善行のお陰かまさかのこの世に身体を持った。助けられた男性はそのお礼に、この世に現れた父に協力してくれることに。

 そんな、馬鹿げた話。
 でも。
 死んだ筈の父が、今、生前の姿そのままで目の前にいる――。

 どうせなら、しっかり母、姉、弟とも話をして欲しいと、私は夫や娘息子と一緒に、奔走し始める。

 父親を失った家族と、死んだ筈の父親が紡ぐ、最初で最後の、サヨナラまでの時間。


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